犬も人間も同じで年を重ねれば、さまざまな老化現象がはじまってきます。
今回は、こんな症状があったら老化のサイン、といわれるものをまとめてみました。
老いを放置してしまうと、思いがけない骨折などのケガにつながる危険性もあります。
あなたの愛犬にあてはまるものがないか、生活のなかで不自由そうになってきたところがないかなどを気にしつつ、チェックしてみてください。
体(見た目)の変化
毛が白くなってきた
人間と同じく、犬も白髪になります。
ひげや鼻のまわりから徐々に白くなり、その後、体全体に白髪が混じるようになっていきます。
毛つやがわるくなった/毛が薄くなってきた
新陳代謝の低下やホルモンの分泌量の変化によって、被毛が次第に薄くなっていきます。通常、犬の換毛期は春から夏及び秋から冬の季節の変わり目にありますが、老犬の場合、それ以外の時期でも毛が抜けることがあります。
これを放置してしまうと抜け毛がからまって皮膚炎などを引き起こす可能性もありますので、ブラッシングは適宜行うようにしましょう。
フケが多くなった
高齢になると皮脂の分泌量が減るため、皮膚が乾燥しやすくなります。
そのため、フケが生じるようになるのですが、単なる老化ではなくアレルギー性や脂漏症皮膚炎などが原因の場合もあります。
フケがある場合には、皮ふに湿疹ができていないか、赤くなっていないかなど確認するようにしてください。
口臭がするようになった
口内炎、歯石固着または歯周病などの病気が疑われます。
口の中に異常がないのに口臭がする場合、腎不全や肝不全など内臓疾患が原因かもしれません。異常に気づいたら、早急にかかりつけの獣医師さんを受診するようにしてください。
おしりが小さくなった
犬は前足に約7割、後足に約3割の割合で体重をかけて歩きます。
ですので、前足まわりに比べて後足まわりの筋力の方が落ちやすいという身体的特徴があります。
上半身に比べてお尻が小さく見えるようになったら、後足まわりの筋力が衰えてきたサインです。
顔などにイボ(疣贅(ゆうぜい))ができた
高齢になると現れ、なかでもトイ・プードルやマルチーズによくみられます。
直径数ミリから1㎝ほどの突起物で、硬いものなどでこすってしまうと出血してしまうこともあります。多くの場合良性ですが、脂肪腫や腫瘍など悪性の場合もありますので注意が必要です。
異常な突起物(イボ・できもの)に気づいたら、すぐにかかりつけの動物病院を受診するようにしてください。
目が白く濁ってきた
加齢性白内障は、目の中の水晶体がにごってくる病気です。
視力低下をともないますので、物にぶつかりやすくなります。
目が白くなってきたなと思ったら、愛犬がぶつかってケガをしないように家具の配置を変えたり、ぶつかってもケガをしないように家具の角にカバーを付けたりするなどできる対策をしておくといいですね。
ただし、目が見えにくくなっている愛犬にとって、いきなりすべての家具の配置を変えることは戸惑いや混乱のもとです。家具の配置換えなどは少しずつ、愛犬を環境に慣らしながら行うようにしましょう。
頭やしっぽがさがってきた
老犬になると、頭をささえる首の筋肉やしっぽをあげるための筋力が低下するため、頭やしっぽが下がってきてしまいます。
「わたしを見てもしっぽを振らなくなった」と悲しまないでくださいね。
しっぽではうまく表現できなくなっただけで、きっと心の中では嬉しく思っているはずです。
下痢や便秘になりやすくなる
高齢になると消化機能が低下するため、若いころと同じ量の食事を同じように食べていると、おなかをこわしてしまうことが多くなります。
また、おなかを壊す原因のひとつとしてストレスもあります。
高齢になるとストレスにも弱くなるので、環境の変化や外部からの刺激などストレスに繋がりそうなものは、なるべく避けてあげるようにしましょう。
体型が著しく変化した
内容も量もいままでの食事と変えていないのに太ってきた、もしくはやせてきたというのをよく聞きます。
太ってしまう場合は栄養過剰ないし基礎代謝が低下している可能性が、やせてしまう場合は消化機能が低下している可能性が考えられます。
しかし、急激に太った、または、急激にやせたという場合には病気の可能性があります。
単純に考えて、例えば10㎏の犬の1㎏増減は60㎏の人間の6㎏増減です。人間でも急に6㎏増減したら異常ですよね?
そのような場合には、たかが1㎏と思わず、すぐにかかりつけの獣医師さんを受診するようにしてください。
これら、体(見た目)の変化は、わかりやすい反面、「年をとってきたら当たり前」に現れる症状ですので、ついつい見過ごしがちです。なかには重大な病気の予兆として現れている可能性もありますので注意が必要です。
行動の変化
呼んでも反応しないときがある
名前を呼んでも反応しなかったり、大きな音がしても寝ていたり。
人の6~10倍といわれる犬の聴覚も、年をとるとともに衰えてきます。
聴覚が衰えている場合、いきなり犬の体に触れてしまうと驚かせてしまいかねませんので、体に触れる際には、
- 愛犬の視界に入る位置から徐々に近づいていく
- 愛犬のまわりの床やベッドなどを軽くたたいて振動で伝える
などをして、自分の存在を愛犬に伝えてから触れるようにしましょう。

寝ている時間が増えた
寝ている時間が増えること自体は、とても自然なことです。
疲れをとったり、体力を回復させたりするうえで睡眠は非常に重要です。静かな環境を作り、ゆっくり眠れるようにしてあげましょう。
しかし、認知症などを発症すると、夜になると徘徊(はいかい)しだしたり、夜中に鳴き続けるような行動がみられたりと、「眠る」とは真逆の行動をとるようになることがあります。
睡眠時間が削られるのは愛犬にとっても、介護をする家族にとってもいいことはひとつもありません。
などを行うことで夜ぐっすり眠れるようにしてあげたほうが、愛犬の身体はもちろん、介護をする家族にとっても良いのかなと思います。
よく物にぶつかるようになった
白内障などにより視力が低下し、目の前にあるものが見えにくくなってきてしまいます。
目が見えにくくなってきたのかなと感じることがあれば、ぶつからないように家具の配置を変えたり、ぶつかってもケガをしないように家具の角にカバーを付けたりすることで、ぶつかり事故対策をしておきましょう。
ただし、上に書いたように、模様替えをする場合には家具の配置換えなどは少しずつ、愛犬の様子を見ながら行うようにしましょう。
散歩に行くと足の甲が汚れるようになった
散歩などで外から帰ったあと、足の甲を見てみて下さい。
もしも、足の甲が汚れている場合、うまく足を折り曲げることができなくなっているのかもしれません。(いわゆる、ナックリンクと呼ばれる状態)。
この状態で歩き続けると足の甲や爪にケガをしたり、破傷風菌に感染したりする可能性があって危険なのはもちろん、すでに関節炎などを起こしていることも考えられますので、絶対に無理に歩かせないようにしてください。
人間と同じで、自力で歩くことができる犬と自力で歩くことのできない犬とでは、介護の負担割合がまったく異なります。どちらの方が大変かは、言わずもがなですよね。
「足のけがや関節炎などがひどくなって歩くことができなくなった」などということがないよう、足の甲に汚れを見つけたら、決して無理をさせず、なるべく早いうちに動物病院を受診することをおすすめします。
歩幅が狭くなった
股関節が固くなってきたり、後足まわりの筋肉が衰えてきたりすると、次第に後ろ足の歩幅が狭くなってきます。
歩幅が狭くなりますので、歩くときに足がもつれてしまい、歩くスピードがゆっくりになったり、つまずいたりしがちになります。
温めたタオルをあてて血流をよくしたり、さする程度の力でマッサージしたりして労わってあげましょう。
あるいは関節に良いサプリメントを飲むことで改善することがあります。
階段など段差をさけるようになった
老犬になると段差や階段をなるべく避けようとします。
無理してジャンプさせたりすると腰や関節を痛めかねませんので、スロープを用意したり、抱っこができる子は抱っこしたりして介助してあげるようにしてください。
トイレの失敗が増えた
認知症が原因である場合のほか、膀胱の筋肉の衰え、または神経系の細胞の減少により尿意の伝達がうまくいかなくなることなども原因として考えられます。
私も経験しましたが、犬がおもらしをするようになると老犬介護の負担は爆発的に増します。
とはいえ、排泄がきちんと行われなくなれば、それこそ腎不全などの命にかかわるような重大な病気を引き起こしかねません。
おしっこやうんちがきちんと排泄されるということは、たとえそれが正しい場所でなかったとしても、とてもありがたいことなのです。
食欲がなくなった・あまり食べなくなった
年を取ると若いころよりも食欲が落ちるのは犬も人間も同じですが、あまりにも食べない場合には、歯や口の中に痛みがある可能性や内臓の病気で食欲不振をおこしている可能性もあります。
普段の食事量と比べて、極端に食べる量が少くなったと思われる場合には、かかりつけの獣医師さんに相談してみてください。
食べ物の好みが変わった
歯やあごの筋肉が弱くなるため、かたいものよりやわらかいものを好むように変わってきます。
消化機能も低下しているので、老犬の食事にはかたいものは避けた方がいいですが、やわらかいものは歯に歯垢が定着しやすいので注意してください。
歯垢は放置すると2~3日で歯周病の原因となる歯石になってしまいます。歯周病は口内に悪影響を及ぼすだけでなく、全身疾患の原因にもなる恐ろしい病気です。
歯みがきなどのデンタルケアはできるだけ毎日行い、口内を清潔に保つようにしましょう。
心の変化編
ほかの動物やおもちゃなどに関心を示さなくなった
若いころは何に対しても興味津々だった犬も、年をとるとともに、徐々に好奇心や意欲が薄くなり、物事に対して関心を示さなくなります。
とはいえ、「年だから仕方がない」といって放置していると、老化はますます進行するばかりです。
何か犬が楽しめる遊びを考えて一緒に遊んであげましょう。それだけで心の老化は防ぐことができます。
ちなみにわが家の愛犬とは、かくれんぼや宝(おやつ)さがしをして遊んでいました。
ただ、視力も落ちてきますので物理的に見えていない可能性もあります。また、興味がないところを無理やり遊ばせることもストレスになりますので、遊びはあくまで愛犬が希望したときに行うようにしましょう。

散歩にあまり行きたがらなくなった
散歩に行くのが大好きだった子も、あまり行きたがらなくなったり、少し歩くとすぐに疲れてペースが落ちてしまったりします。
原因については、
- 循環器や呼吸器の病気で呼吸がしにくいために運動を嫌がっている
- 関節が痛むので歩きたくない
- 内分泌の病気が原因
など、いろいろなことが考えられます。
リードを見せるとしっぽを振るなど行きたい素振りを見せるけれど動かない、よく見ると特定の足をかばうように歩いている、などといった様子が見られた場合には、一度かかりつけの獣医師さんに相談されることをおすすめします。
触られるのを嫌がる・怒りっぽくなった
触れられるのを嫌がったり、噛みつくふりをしてみたり。歳をとるとどうにも神経質になってしまう子がいます。
今までできていたことができなくなったことに対するイライラや、視覚や聴覚の衰えで不安になったりしていることが一因だろうと考えられていますが、実際に体のどこかに痛みがあるせいかもしれません。
身体の痛みが原因であれば、それさえ完治すればイライラは解消されます。
どこを触ると嫌がるのかを見極め、かかりつけの獣医師さんに診てもらうようにしましょう。
まとめ
以上、老化のサインについて書きだしてみました。
前述しましたが、治療ができる段階で病気を発見できるかどうかは、共に生活する家族が愛犬のささいな異変に気づくことができるかどうかにかかっています。
上記にあてはまる症状があってもなくても、
愛犬がシニア期※に入ったら半年に1度
は健康診断を受けていただければと思います。

最後までお読みいただき、
ありがとうございました(^^)
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