犬がチョコレート食べた!危険な量は?どう対処したらいい?

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今回は犬とチョコレートの関係についてまとめていきます。

ヒトにとっては、カカオポリフェノールによる血圧低下や、精神の安定に深くかかわるセロトニンの分泌をうながす効果によりリラックス作用があるなど、さまざまな良い効果があるチョコレートですが、にとっては健康をそこなうおそれがある食べ物として、多くの獣医師がその危険性を訴えています。

 今、愛犬が【チョコレート】を食べちゃったという方へ
  • テオブロミンの毒性は体重1kgあたり90~100mgで発現する、とのこと
  • ビターチョコだと約1.3枚。ココアだとスプーン山盛り約180杯。
  • 吐かせると危険なことも。吐かせず、今すぐかかりつけ獣医に連絡を
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犬にとってチョコレートの何がいけないのか

チョコレートの原料であるカカオ豆には【メチルキサンチン類】という化合物が含まれています。

メチルキサンチン類の代表的なものとしては「カフェイン」「テオブロミン」「テオフィリン」が挙げられます。

これらの成分が犬の体に悪影響をおよぼす原因物質とされています。

カフェイン

紅茶やコーヒーなどに含まれる成分で、睡眠や疲れの抑制、興奮、利尿作用などをもちます。

カフェインが体内に入ると、血液に乗って脳に運ばれます。

脳には【アデノシン】という情報伝達物質と、それを受け止める【アデノシン受容体】という物質があるのですが、このアデノシンとカフェインの構造は非常によく似ています

そのため、アデノシンより先にカフェインがアデノシン受容体と結びついてしまうと、ほかの臓器からのメッセージ(情報)をもつアデノシンがアデノシン受容体と結びつくことができなくなってしまいます。

その結果、疲れたという情報が来ないので「まだ疲れていない」「まだ寝なくていい」と体がかんちがいしてしまい、結果、疲れや眠気を感じなくなるというわけです。

犬や猫では全般的にカフェインの効果が人よりも長く続くともいわれています。

犬にチョコレートは与えないほうがいい食べ物のひとつとして覚えておいてください。

テオブロミン

犬にとっては、カフェインも良くない物質であることに間違いないのですが、チョコレートに関しては【テオブロミン】の方がより悪影響の強い化合物です。

テオブロミンとは、カフェインと同じく利尿、興奮、末梢血管や気管支の拡張、心臓刺激などの作用をもつメチルキサンチン類の化合物で、植物中に含有される天然の化学物質

カカオ製品を口にしたときに感じる苦みのおもな成分であり、カカオの含有量が多いほど(苦ければ苦いほど)ふくまれるテオブロミンの量は多くなります。

口から入ったテオブロミンは肝臓でメチルキサンチンに分解、その後、メチル尿酸となり体のそとへ排出されます。

この排出までにかかる時間が要注意。

血漿(けっしょう)中のテオブロミンの血中濃度が半減するまでにかかる時間はヒトでは6時間程度なのに対し、代謝酵素が弱い犬では17.5時間もかかってしまいます。(ネコの実験データはありませんが、同様と考えられています。)

競走馬ではドーピングの対象薬物ともなっているテオブロミンの強い興奮作用や血管拡張作用などの薬理効果が、犬ではヒトの3倍近く長く続いてしまうわけです。

カカオを含む中毒の危険のある食品の例

  • チョコレート、チョコレート菓子
  • ココア、ココアパウダー
  • コーヒー
  • 紅茶、日本茶、抹茶、玉露、マテ茶
  • コーラ など

上記のとおり、これらのメチルキサンチン類はカカオ豆に含まれています。

食品のパッケージにある成分表を確認し、「カカオマス」、ココアパウダー」、カカオエキス」などの表示があるものは与えないよう、また愛犬が勝手に食べないようにご注意ください。

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犬にとって危険な量

具体的にどれくらいの量を食べたらチョコレート中毒(メチルキサンチン中毒)になる危険性があり、また、どのような症状が発現するのでしょうか。

ペット栄養学会の論文によると、テオブロミンの毒性は、犬では90~100㎎/㎏体重か、それ以上で発症するといわれています。

犬では90~100mg/kg体重 ➡ 1kgあたり90~100mg

各食品のテオブロミンの数値は下記の論文から抜き出しています。

ココアの場合

100gの中にテオブロミンが100mg含まれていますので、約900g食べると含有量が900mgになります。

スプーン山盛り1杯で約5gなので、スプーン山盛りだと約180杯です。

チョコレートの場合

100gの中にテオブロミンが最高で1,300mg含まれていますので、約69gで含有量が900mgに到達します。

市販の板チョコは1枚約55gなので、板チョコだと約1.3枚です。

この計算はカカオ含有量が多めのもの(ビターチョコ)で計算しています。ミルクチョコレートなどではテオブロミン含有量はもっと低くなると考えられます。

紅茶・茶葉の場合

100gの中にテオブロミンが最高で460mg含まれていますので、約196gで含有量が900mgに到達します。

紅茶の茶葉はティースプーン1杯で約2.5gなので、ティースプーンだと約78.4杯です。

紅茶・ティーバックの場合

100gの中にテオブロミンが最高で250mg含まれていますので、約360gで含有量が900mgに到達します。

市販の紅茶のティーバックは約2g入っているので、ティーバック約180袋分です。

ティーバックや茶葉だけで食べることは考えにくいですが、茶葉をつかったパウンドケーキなどの焼き菓子だと食べてしまうこともあるかもしれません。

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チョコレートの誤飲で、どんな症状がみられるか

初期症状

  • 嘔吐
  • 下痢
  • パンティング(口をあけてハアハアと呼吸すること)
  • 落ち着かない、など

悪化すると

  • 体温の上昇
  • けいれん
  • 尿量増加
  • 筋肉の震え、など

最悪の場合、昏睡から死にいたることもあります。

症状があらわれるまでの時間

通常、チョコレートなどを口にしてから4~5時間後に初期症状がみられ、それから半日の間に上記のさまざまな症状があらわれます。

初期の段階で行動できるかどうかが、かなり重要であることがわかります。

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誤食時の対処法

チョコレートやココアは口の中に入った瞬間に溶けてしまいますので、吐き出させるのはむずかしいと思います。

それでも、銀紙ごと飲み込んだ場合など、口の中にあるのがわかるときには、早急に口中から取り出してください

素人が吐かせるとかえって危険なことも

飲み込んでしまった場合、かかりつけの獣医師にすぐに連絡し、食べた量を伝え指示をあおぎましょう。

『食塩水やオキシドールで薄めた水を飲ませて吐かせる』といった方法を推奨しているホームページもありますが、私はおすすめしません。

※詳細は後述しますが、とくにオキシドールの使用は絶対に素人判断で行わないようにしてください。

普段は落ち着いている保護者の方でも、チョコレートやタマネギを食べたとなると

あわわ!! 

急いで吐かせなきゃ!!

と慌ててしまい、それが元で誤嚥(ごえん)させてしまったり、または犬のノドや口のなかを傷つけてしまったりするおそれがあるためです。また、無理やり口をこじ開けることで、保護者の方がかまれてケガをすることも多々あります。

動物病院に行っても、あまりにも食べた量が多い場合などには、催吐剤などをつかって吐かせることになるか、胃洗浄が必要になるかもしれませんが、ほとんどのケースで様子見になることが多いようです。

吐かせなくてもいいのに、無理に吐かせて身体に負担を与えてしまわないようまずはかかりつけの獣医師に連絡してみてください。

動物病院で行なわれる催吐処置

トコンシロップや過酸化水素(オキシドール)などを経口投与する方法と、キシラジンやトラネキサム酸を注射によって投与する方法があります。

一般的にはオキシドールをもちいる動物病院が多いようですが、オキシドールを使用すると胃内がはげしくただれる(糜爛する)ため、胃内の炎症が治まるまで治療を続ける必要があります。(※オキシドールの使用をとめたのはこのためです。)

では、トラネキサム酸の方がいいかというと、こちらは本来止血剤ですので、催吐剤としての使用は推奨されていません

残念ながら、今のところテオブロミンの解毒薬はありません。

愛犬に無駄な苦しみを与えないためにも、チョコレート類の管理には十分ご注意ください。

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まとめ

チョコレート・チョコレート菓子・紅茶葉以外は危険とされる量がかなり多くありますので、それほど危険性はないと考えます。どう考えてもそんなには食べきれないと思いますので。

とはいえ、この体重1kgあたり90mgという数値はあくまで理論上のもの

それに、ペット栄養学会では中毒を起こす危険性のある数値は90~100mg/体重1kgあたりとしていますが、もっと少ない50mg/体重1kgあたりで中毒をおこすと考えている獣医師もいらっしゃいます。

最初に書いたとおり、テオブロミンは競走馬ではドーピングの対象になるほど強い効能をもっています。

もちろん、個体差もありますので多少食べても平気な子もいるでしょう。しかし、それと同時に、たったひとかけらのチョコレートでも強い悪影響を受けてしまう子もいます。

愛犬がチョコレートなどを誤って食べてしまった場合には、かかりつけ獣医師に相談し、どうすればいいか確認していただければうれしく思います。

最後までお読みいただき、

ありがとうございました(^^)

■参照
・禁忌食(その2)-チョコレートとイヌ・ネコの健康:中島誠之助著他,ペット栄養学会誌15(1),36-38,2012
・食品中のカフェイン、テオブロミン及びテオフィリンの含有量:守安貴子他著,食品衛生学雑誌,1996 年 37 巻 1 号 p. 59-63

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