今回のテーマは成犬のワクチン接種の間隔について。
飼い主さんより「ワクチンって毎年しなきゃダメなの?」「成犬になってからは3年に1度でいいってホント?」などの質問を受け、いろいろと調べてみましたので、こちらでも共有させていただこうと思います。
なお、ワクチンについての考え方はさまざまあるとは思いますが、本記事は『2015年にWSAVAのワクチネーションガイドライングループ(VGG)が発表したガイドライン』に沿って説明していきます。
「今年のワクチン接種、どうしようかな」とお悩み中の方に、考え方のひとつとしてご一読いただければと思います。
ちなみに、子犬のワクチンスケジュールは成犬とはまったく違うのでご注意ください。
WSAVAって何?
WSAVAとは、『World Small Animal Veterinary Association.』の略で、日本語にすると【世界小動物獣医師会】を意味し、その名のとおり、世界中の多くの獣医師らで構成されています。
2004年、WSAVAにおいて

世界的に適用される犬および猫の
ワクチン接種に関するガイドラインを作ろう!
という動きがおこり、これを目的とした『ワクチネーションガイドライングループ(Vaccination Guidelines Group、VGG)』が結成されました。
VGGは2007年に最初のガイドラインを発表。その後、2010年、2015年の改定を経て今にいたります。
今回のテーマに関する私の結論は、このVGGのガイドラインの1ページ目に書かれた以下の文章に要約されます。
ワクチンは不用意に摂取すべきでない。
ワクチンについて
ワクチンとは
ワクチンとは、感染症の原因となるウイルスや細菌から作られた薬の一種です。
病原性を無くしたり、弱めたりした病原体(抗原)を身体に入れて戦わせることで抗体をつくり、感染症に対抗する免疫をつけることを目的としています。
ただ、弱毒化してあるとはいえ病原体を体内に入れるのですから、副作用をふくめ、何かしらの悪影響がある可能性もないとは言いきれません。
現に、VGGのガイドラインでも、
ワクチンはさまざまな免疫疾患のトリガー(きっかけ)となり得る
とあり、ワクチン接種は慎重に行われなければならないことを提言しています。
ワクチンの種類
犬のワクチンは、コアワクチン、ノンコアワクチンの二種に分類されます。
コアワクチン
犬のコアワクチンは世界中で感染が認められる致死率の高い感染症を予防するためのワクチンで、以下の三種がふくまれます。
住んでいる地域やその病気にかかるリスクがあるかどうかにかかわらず、すべての犬が接種すべきとされています。
日本では狂犬病ウイルスもコアワクチンにふくまれており、年に1度の接種が法律上の義務となっています。
犬アデノウイルスには1型(犬伝染性肝炎)と2型(犬伝染性喉頭気管炎)がありますが、VGGのガイドラインでは「犬アデノウイルス2型のワクチンが利用できる場合、1型のワクチンは推奨されない」とされています。
日本で取りあつかいのあるワクチンのうち「1型、2型どちらにも効果あり」としてあるものをいくつか調べてみたところ、弱毒性の犬アデノウイルス2型のみが成分にふくまれていました。1型にもこれで効果がある、ということみたいですね。

ノンコアワクチン
一方、犬のノンコアワクチンは、コアワクチンとちがって、その病気がまったく存在しない地域やかかる可能性が非常に低い地域では接種しなくてもいい、と考えられているワクチンをいいます。
私が調べたかぎり、日本ではおもに犬パラインフルエンザウイルスとレプトスピラがノンコアワクチンとして使用されていました。
ノンコアワクチンの中には、犬コロナウイルスを含んでいるものもありますが、VGGのガイドラインによると犬コロナウイルスに関しては、「ワクチンを接種したから感染予防効果がある」とする科学的根拠はないとして、ワクチン接種を推奨していません。
犬コロナウイルスのワクチンについては接種しなくてもよさそうです。
ワクチンの免疫持続期間
コアワクチンの免疫持続期間=最長で終生持続
近年、市場にあるコアワクチンは非常に有用で、子犬のときにコアワクチンを接種した後、1回も追加せずに15年間予防効果が持続したというケースもガイドラインには書かれています。
他にも、
など、長期にわたりワクチン接種の効果が持続していたという報告もありました。
上記のとおり、ワクチンを接種するのは、体内に抗体を作るためです。
抗体があるのにワクチンを接種する必要はありません。
現在、年に1回ワクチンを接種している子も多いかと思いますが、じつはVGGのガイドラインでは、『(コアワクチンは、子犬期の接種が完了したら)3年ごとよりも短い間隔で接種すべきではない』とまで記載されています。
VGGガイドラインの見解
×「コアワクチンは3年に1度接種すべき」
〇「コアワクチンは3年ごとよりも短い期間で接種すべきではない」
ノンコアワクチンの免疫持続期間=一般的に1年
一方、ノンコアワクチンの場合、効果の継続時間はコアワクチンほど長くはなく、レプトスピラにいたっては、ワクチン接種後1~2ヶ月で抗体が検出されなくなるケースもあります。
ただ、抗体が検出されなくても12カ月は予防効果が続くことは証明されています。
かりにワクチン接種の4カ月後に抗体検査をして抗体が検出されなくても、あわててワクチンを追加接種する必要はありません。
しかし、ノンコアワクチンは12カ月以上は効果が持続しませんので、摂取する必要がある場合には、年に1回接種する必要があります。
【結論】ノンコアワクチン接種が必要なかぎり、毎年ワクチン接種が必要

ええっ!
コアワクチンは抗体あればしなくていいのでは?

~~~~~~!!!!!
VGGのガイドラインが『コアワクチンは3年ごとよりも短い期間で接種すべきではない』と言っているにもかかわらず、『ノンコアワクチン接種が必要なかぎり、毎年ワクチン接種が必要』という結論を導かないといけないのは、じつに心苦しい。
しかし、現状、コアワクチンまたはノンコアワクチンだけのワクチンはありません。
つまり、年に1回の接種が推奨されるノンコアワクチンの接種を勧められた子であれば、コアワクチンを含む混合ワクチンを毎年打たなくてはならないのです。
こればかりは致しかたない。残念ですが、今後の技術の発展で分離されたワクチンが開発されることを心より願うばかりです。
ノンコアワクチン接種を推奨されなかった子は、抗体検査(犬用ワクチチェック)でワクチン接種を3年に1度にできるかも
上述のとおり、ノンコアワクチンは生活スタイルなどにより接種しなくてもいい場合があるワクチンです。
「コアワクチンの接種だけで大丈夫」となった子の場合、ワクチン接種の時期を3年に1度にできる可能性があります。
抗体検査をして愛犬の身体のなかに前回接種したワクチンの抗体が残っているかどうかを調べる方法が『抗体検査(犬用ワクチチェック)』です。

ちゃんと抗体があるかどうか、動物病院で
抗体検査をお願いしてみましょう!
抗体検査(犬用ワクチチェック)とは
抗体検査とは、その名のとおり「犬の身体のなかに残っている抗体の量を調べる検査」をいい、【犬用ワクチチェック】という名称のキットを利用して行われます。
血液を採取するのでワクチン接種と同じく、愛犬には注射を我慢してもらわなければなりません。
ですが、その検査で抗体が認められればワクチン接種をする必要はなくなります。
方法としては、①検査機関に依頼する、または②院内で検査するのふたつのパターンがあります。

でも、ワクチン接種したくないっていったら、
先生がイヤな気分になるんじゃないかな……

それは心配無用だと思いますよ
なぜなら、
だからです。
そもそも動物の病気を治したい、健康にしたいという気持ちで治療にあたってる獣医師が、動物に不要な負担を強いるわけがないです(と私は信じています)からね。
ちなみに、ワクチンもワクチチェックも費用は病院によって異なります。ワクチチェックを行っているかどうかもふくめて、病院窓口でご確認ください。

ワクチチェックのメリットとデメリット
まとめ
ということで、VGGのガイドラインにそって成犬のワクチン接種の間隔についてまとめると、
となります。
ただ、この考え方もすでに古くなりつつあり、ヨーロッパなどでは『抗体検査をしてみて抗体があれば、3年たっていてもワクチンは打たない』という流れに向かっているとのこと。
不要なウイルスや細菌をわざわざ体内に入れる必要はありません。
これは、とても良い流れだと私は考えます。

とはいえ、現状は『ノンコアワクチン』だけのワクチンがないので
コアワクチン入りの混合ワクチンを接種するしかないのが悔やまれます。
今後、VGGガイドラインの考え方が浸透し、コアワクチンだけ、またはノンコアワクチンだけのワクチンが開発されることで、抗体のある子が不要なワクチン接種をせずにすむようになればいいなと思います。
下記のURLから犬用ワクチチェックができる動物病院が調べられます。
【受診病院MAP】
犬用ワクチチェック製品ホームページ

最後までお読みいただき、
ありがとうございました(^^)
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