近年、犬にぶどう(レーズン)を与えると急性腎不全を起こしたという症例が発表され、動物業関係者のあいだで大きな話題となっています。
ということで、今回は、ぶどう(レーズン)の危険性についてまとめていきます。
愛犬家のみなさまには、ぜひ一度ご確認いただければと存じます。
なぜ犬にぶどう(レーズン)を与えてはいけないの?
A.急性腎不全をおこす恐れがあるから
この一文がすべての理由になります。
よしわかった!
あげないようにするわ!
という方はここまでで結構です。ご理解ありがとうございます。
あげないようにするけれど、
理由が知りたい
という方は、あと少しお付き合いください。
中毒症状を起こす原因物質は何?
ぶどう(レーズン)を与えないでください、という情報は広まっているものの、実は、ぶどう(レーズン)の何が原因で中毒症状を起こすのかは判明していないのが現状です。
原因物質に関する説としては、
- ぶどう(レーズン)にはシュウ酸が多くふくまれており、シュウ酸カルシウム結石を作りやすいために腎臓機能に障害をおこしているのではないかという説
- ぶどうについたカビ毒、農薬が原因ではないかとする説
- ビタミンDの類似物質が原因とする説
- いまだ解明されていないぶどうの未知の成分が原因とする説
などがありますが、どれも確証がなく、現在のところ特定されるにはいたっていません。
避けるべきぶどうとは?品種は関係ある?
上記のように現時点では何が原因物質なのか不明なため、何とも言えません。
原因が特定され、「それは、○○種のぶどうにだけふくまれています」というのが分かれば、それ以外のぶどうはあげてもいいとなる可能性はあります。
原因物質が不明な現地点では、ぶどう属に属するものはすべて犬に与えないようにしたほうがいいと考えます。
ぶどう(レーズン)が原因で起こる急性腎不全とはどんな病気?
腎不全とは
腎臓は、
生き物が生きていく上でかかせない重要な役割(機能)を担当しています。
「不全」とは「不完全・不良」を意味する言葉で、「腎不全」とは、その名のとおり腎臓の機能が不完全・不良となる状態をいい、何らかの原因で腎臓機能が弱り、上記の役割を果たせなくなる病気をいいます。
慢性腎不全と急性腎不全
腎不全には慢性腎不全と急性腎不全とがあります。
通常、ヒトでも犬でも、一度壊れた腎臓の機能は改善することはなく、慢性腎不全になると腎機能の回復は見込めず、点滴や透析などによって現状をどれだけ維持できるかが大事になってきます。
ただ、急性腎不全の場合、適切な処置を行うことで腎機能が回復する可能性があります。
急性腎不全の症状
どのくらい食べると危険なの?
ぶどう(レーズン)が急性腎不全を引き起こすおそれがあるとして、どのくらいの量を犬が摂取すると危険なのでしょうか。
ペット栄養管理士講習にて発表された具体的な数値をみていきます。
中毒症状を表す目安量
ぶどう | 体重1kgあたり32g |
干しぶどう(レーズン) | 体重1kgあたり11~30g |
これを体重別にまとめると、以下の表の数値になります。
犬の体重 | 5kg | 10㎏ | 15㎏ | 20㎏ | 25㎏ | 30㎏ | 35kg |
ぶどう | 160g | 320g | 480g | 640g | 800g | 960g | 1,120g |
およその量 | 巨峰約12粒 | 巨峰約1房 | 巨峰約1.5房 | 巨峰約2房 | 巨峰約2.5房 | 巨峰約3房 | 巨峰約3.5房 |
レーズン | 55g | 110g | 165g | 220g | 275g | 330g | 385g |
およその量 | 約91粒 | 約183粒 | 約275粒 | 約366粒 | 約458粒 | 約550粒 | 約641粒 |
体重が5kg程度の子であれば、ぶどう(巨峰)だと約12粒、レーズンだと約91粒が中毒症状を起こす危険がある量ということになります。
具体的事例(ぶどうが原因と考えられる2つの死亡案件)
悲しいことにいずれも死亡事例です。
Case.1)9歳、体重4.2㎏、ミニチュアダックスのケース
ブドウ(ピオーネ1房分)の皮を食べた翌日、朝から嘔吐(食べた時間は不明)。
※ピオーネ1房で約500g以上(大きいものでは650g)
Case.2)3歳、体重2.5kg、マルチーズのケース
種なしぶどう(約70g)を皮ごと食べた5時間後の夜中から頻繁に嘔吐。翌日も嘔吐は続き、排尿が見られなくなった。
Case.1)のケースは明らかに上記の目安よりも多いことがわかりますが、Case.2)のケースは、上記の目安よりも10gも少ない量で発症しています。
ということで、現実には、上記表の数値より低い量でも中毒症状をおこす危険はあると考える必要がありそう です。
ぶどう(レーズン)を食べた犬のうち、症状を発症した犬の割合
10頭中3~4頭に何らかの症状、20頭に1頭が死亡
以下、ASPCA※の動物中毒コントロールセンターの調査報告を見てみましょう。
※ASPCA(The American Society for the Prevention of Cruelty to Animals)……アメリカ動物虐待防止協会
2003年~2004年にかけてぶどうを摂取した犬の報告は140例あり、そのうち50例(35.7%)に何らかの症状があり、7例(5.0%)が死亡したとしている。
(ただし、50例に7例を含むのか、50例とは別に死亡ケースが7例あったのかは定かでない)
発症割合としては10頭中3~4頭に何らかの症状が発症し、20頭に1頭が死亡していますので、決して低い方ではないといえます。
食べてから症状が現れるまでの時間はどのくらい?
多くの場合、ぶどうを食べた5~6時間後
多くの場合、ぶどうなどを食べた後、5~6時間で嘔吐がおこりはじめています。
ただし、その子の消化スピードなどにもよりますので、個体差が大きく、もっと早い段階で症状があらわれる可能性は十分にあります。
急性の言葉どうり、きわめて進行が早いため、保護者には早急な対応が求められます。
まとめ
現在のところ原因物質は不明ですが、 ぶどうなどを摂取した犬の多くに腎臓障害が出ていることは事実です。
ぶどう、干しぶどう(レーズン)はもちろん、ぶどうジュース、ぶどうゼリー、ぶどうジャム、レーズンたっぷりの食パン、ドライフルーツ入りパウンドケーキ、ワインを使った料理などぶどうを使った加工食品も絶対に与えないよう、また愛犬があやまって食べることのないよう、管理にも十分ご注意ください。
万が一誤飲してしまった場合でも、慢性的な腎疾患がない急性腎不全の場合、腎臓機能が改善する可能性はあります。
わが家の愛犬は腎不全で亡くなりました。
腎疾患で苦しむ犬はもう見たくありません。
愛犬の誤飲に気がついたら、慌てず、焦らず、でも早急に獣医師に連絡をとり、動物病院を受診するか、それが不可能な場合には、どうすればよいか判断をあおぐようにしてください。
最後までお読みいただき、
ありがとうございました(^^)
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