愛犬が甲状腺機能低下症と診断された!原因は?治るの?

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今回は犬の甲状腺機能低下症についてまとめていきます。

ヒトにもある病気ですので「病名は聞いたことがある」という方も多いかもしれません。犬でもヒトと同じような症状がみられるのか、原因はなんなのか、改善するのか、などについてまとめました。

興味があればお付き合いください。

 忙しい方のための三行まとめ
  • 甲状腺機能が低下すると基礎代謝が下がるので全身に悪影響がある
  • 症状は、元気がない、異常に寒がる、震えていることが多いなど
  • 甲状腺ホルモンは不安定。健康体でも数値が低く出ることもある
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甲状腺機能低下症ってどんな病気?

「甲状腺」とは

甲状腺」とは、体の新陳代謝を促進するホルモン甲状腺ホルモン)を出す器官で、喉の中央(口から胸までの間の中間地点あたり)の気管の両側にある臓器になります。

甲状腺は、脳の下垂体から甲状腺刺激ホルモン(TSH)を受取ると、食べ物に含まれるヨウ素(ヨード)を原料にして甲状腺ホルモンを生成。トリヨードサイロニン(T3)サイロキシン(T4)という2種類のホルモンを分泌します。

この2つの甲状腺ホルモンが血液中に分泌され、全身に運ばれるわけですが、生命維持のためには、この甲状腺ホルモンが適正な量で維持されることがとても重要になります。

そのため、甲状腺はホルモンの量が多い場合には甲状腺内にため量が足りない場合には、必要な量を分泌するようにして、体のなかの甲状腺ホルモンの量が常に適量になるよう調整しています。

「甲状腺機能低下症」とは

この甲状腺に何らかの異常が生じ、甲状腺ホルモンが減少(不足)してしまう病気です。

新陳代謝を促進するホルモンの減少(不足)により、基礎代謝が低下します。

それにともなって体中のさまざまな器官の機能が全体的に低下していき、その結果、体中のいたるところ悪影響があらわれます。

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甲状腺機能低下症になる原因

原因にはいくつかのケースがあります。

原因その① 自己免疫性

通常、自分自身の体内にある免疫システムは、ウイルスなどの外部の敵に対してのみ攻撃をします。

ところが、この免疫システムが誤作動してしまうと、正常な細胞(甲状腺)を異物(敵)とみなして抗体(攻撃部隊)を生成。甲状腺を破壊してしまいます。

破壊された甲状腺は萎縮または壊死してしまうため、甲状腺ホルモンの産出量が減ってしまいます。

多くの場合、甲状腺機能低下症の原因はこれ(自己免疫反応)によるものとされていますが、免疫システムが誤作動をおこす原因自体は、いまだに解明されていません。

原因その② 脳からの命令異常

上記のとおり、甲状腺は脳の下垂体から甲状腺刺激ホルモン(TSH)を受取ることによって甲状腺ホルモンを産出します。

そのため、下垂体から「甲状腺刺激ホルモン(TSH)を出せ」という命令が届かない場合、甲状腺ホルモンは産出されず、甲状腺ホルモンが足りなくなります。

二次性甲状腺機能低下症ともいいますが、これを原因とする甲状腺機能低下症はあまりなく、多くは原因その①の自己免疫性の甲状腺破壊が原因と考えられています。

原因その③ 遺伝

遺伝性な要素が甲状腺の機能不全が原因となるケースもあります。

甲状腺機能低下症はどんな犬でもかかる病気ですが、発症しやすい犬種もあり、遺伝性による発症も原因のひとつとして考えられています。

原因その④ 薬や他の病気

その他では、

  • 服用中の薬などが原因で起こるケース
  • 甲状腺機能亢進症の治療によって引き起こされるケース
  • 副腎皮質機能亢進症や腫瘍など、他の病気の影響によるケース

などがあります。

※甲状腺機能亢進症……甲状腺機能低下症とは反対に、甲状腺ホルモンが過剰に分泌される病気。

これらは、服用中の薬をやめる(または、ほかの薬に変更する)、原因となる元の病気が治る、などによって甲状腺機能も正常化します。

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原発性・二次性・三次性のちがい

  1. 原発性:甲状腺の萎縮・壊死が原因のもの
  2. 二次性:下垂体からの甲状腺刺激ホルモンの産出異常が原因のもの
  3. 三次性:視床下部からの甲状腺刺激ホルモン放出ホルモンの産出異常が原因のもの

ただし、犬の甲状腺機能低下症の場合、二次性・三次性を原因とするケースはほぼなく、多くは原発性のものが原因とされます。

腺機能低下症の場合、二次性・三次性を原因とするケースはほぼなく、多くは原発性のものが原因とされます。

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甲状腺機能低下症を発症しやすい犬種や体型は?

犬種

  • ゴールデン・レトリーバー
  • シベリアン・ハスキー
  • シェットランド・シープドッグ
  • 柴犬

などが多いようですが、これら以外でも、雑種を含めどんな犬種でも発症します。

体型

小型犬の発症は比較的めずらしく、中型犬~大型犬で多く見られます。

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甲状腺機能低下症のおもな症状

甲状腺機能低下症の主な症状としては、以下のものがあります。

元気の消失

  • 運動をいやがる
  • 散歩中とぼとぼと元気なく歩く
  • 少し散歩したら、すぐに家に帰りたがる
  • 目に覇気がない

異常に寒がる

  • 夏でも日のあたる窓側などの場所に行きたがる
  • 冬は暖房機器から離れない
  • 震えていることが多い

被毛・皮膚の異常

  • 被毛はパサつき、光沢がない
  • 換毛が起こらない、もしくは途中で止まっている
  • 大腿部やわき腹の抜け毛(大型犬では四肢の脱毛も多い)
  • 尻尾の脱毛
  • 腹部の皮膚の黒ずみ(色素沈着)
  • 全身の皮ふ炎

発情異常

  • 発情しない、もしくは発情周期が不規則になる

これらの症状(とくに元気の消失)は、高齢犬では「老化によるもの」と考えがちですが、もしかすると年のせいではなく、甲状腺機能低下症によるものかもしれません。

では、「ちょっと不安になったから、愛犬が甲状腺機能低下症でないか調べてみたい」という場合、どのような検査をしたらよいのでしょうか。

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甲状腺機能低下症の診断に必要な4項目

甲状腺機能低下症の診断に必要な検査はいくつかありますが、このうち必要最低限の検査内容と考えられている以下の4項目について解説していきます。

  1. 保護者からの症状の聞き取り(問診)
  2. 血液中に含まれる甲状腺ホルモン(T4、FT4)数値の測定
  3. 下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモン(TSH)数値の測定
  4. コレステロール値の測定

❷~❹は血液検査で測定します。

保護者からの症状の聞き取り(問診)

甲状腺機能低下症は特定がむずかしい病気のひとつ

その子の状態によっては、甲状腺機能低下症かどうかを判断するために、上記の検査以外の検査を必要とする場合も考えられます。

そのためにも問診(保護者からの聞き取り)は、獣医師が治療するうえでとても重要。保護者のちょっとした違和感が大きなヒントとなることも多々ありますので、気づいたことなどはしっかり獣医師に伝えましょう。

寄り道をすることなく診断がでれば、不要な検査をしなくて済みます。

そうすれば、愛犬の負荷も軽くなるし、

費用も抑えられる。いいことばかりですね。

上記の症状のうち、あてはまるものがあれば、「該当する症状」そして「甲状腺機能低下症の疑いをもっていること」を獣医師に伝えてみましょう

血液中に含まれる甲状腺ホルモン(T4、FT4)の数値

血液検査(および血中ホルモン検査)を行う必要があります。

採血の方法としては、通常の血液検査と同じです。

ただし、血中ホルモン検査は、ほとんどの動物病院で検査は外部に委託しているケースが多いため、外部に検査を委託する場合、結果がわかるまでに少し時間がかかります。

また、結果に影響を与えないよう、採血時間の8~12時間前は絶食をすすめられることがあるかもしれません。そのあたりは、かかりつけの動物病院(獣医師)の指示にしたがうようにしてください。

測定するのは、採取した血液の中に含まれる甲状腺ホルモンのうち、サイロキシン(T4)および遊離サイロキシン(FT4)の2つの数値。

この数値がそれぞれ正常値内にあるかどうかがチェック項目となります。

サイロキシン(T4)遊離サイロキシン(FT4)
正常値0.84~3.460.60~3.20
甲状腺機能低下症(原発性)0.5(㎍/dL)に満たない0.5(㎍/dL)に満たない
甲状腺機能低下症(二次性・三次性)5(pmol/L)に満たない5(pmol/L)に満たない

ちなみに、サイロキシンとはタンパクと結合したもので、ホルモンとしての機能はありません。ホルモンとして働くのは、タンパクと結合していない遊離サイロキシン(FT4)(FT4のFはFreeのF)

FT4の数値が低いということは、働いている甲状腺ホルモンが少ないことを意味しており、すなわち、甲状腺機能が低下していることを示しています。

なお、甲状腺ホルモンはとても不安定な数値で、甲状腺に問題のない健康な子でも数値が低く出ることもあります。

この数値だけではなく、さまざまな要因を総合的に判断し、診断する必要があります。

下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモン(TSH)の数値

これも血液検査(および血中ホルモン検査)によって測定します。

上記のサイロキシンの測定と同時に出来ますので、採血を2回する必要はありません。

甲状腺刺激ホルモン(TSH)
正常値0.50に満たない
甲状腺機能低下症(原発性)0.3(ng/mL)を超える
甲状腺機能低下症(二次性・三次性)0.05(ng/mL)に満たない

甲状腺刺激ホルモン(TSH)の働きは、甲状腺ホルモンが不足している場合に、「甲状腺ホルモンを出せ」という命令を送りホルモンを産出させる、というものでした。

ですので、①甲状腺刺激ホルモンが少ない、すなわち「命令がない」状態では、甲状腺ホルモンが産出されずに甲状腺機能低下症になる、ということは予想どおりです。

しかし、②甲状腺刺激ホルモンがたくさん出ているにもかかわらず、甲状腺が損傷を受けているために命令が伝わらず、甲状腺機能低下症となるケースもあります。

この場合、甲状腺刺激ホルモンは過剰に分泌されているため、数値は高くなりますが、甲状腺の機能は命令がきけない状態に傷ついており、「甲状腺機能低下症」と診断されます。

①甲状腺刺激ホルモン(ねこ側)に異常があるケース

ホルモンの量は、まだ大丈夫そう

(ホルモンの不足を感知できていない)

了解!じゃあ、ホルモンは産出しないね

②甲状腺(はと側)に異常があるケース (下垂体(ねこ側)の命令は正常。甲状腺(はやま側)に異常がなければ本来問題ない)

早くホルモンを分泌して

でも今ちょっと甲状腺が

傷ついててですね……

足りてないんです! 急いで!

コレステロール値の測定

コレステロール値の上昇もよく見られるため、これも測定する必要があります。

血液検査で調べることになりますが、同じく上記3つの数値(T4、FT4、TSH)の測定と同時に出来ますので、2回採血する必要はありません。

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甲状腺機能低下症の治療法について

甲状腺機能低下症と診断された場合の治療法は、以下のとおりになります。

他の病気が原因の場合

当然のことながら、他の病気の治療を行います。他の病気が治れば、甲状腺機能低下症も回復します。

ほかの病気が何かにもよりますが、他の病気の治療と同時に、甲状腺機能低下症の治療のためのホルモン薬の投与を行うこともあります。

服用中の薬が原因の場合

服用をやめても問題がなければ、服用を中止します。

服用をやめて問題がある場合、ほかの薬に変えられないか獣医師と相談してみてください。

服用の中止・薬の変更は決して独断で判断せず、必ず獣医師に相談のうえ、決定するようにしてください

上記に該当しない場合

甲状腺ホルモン製剤を経口投与する(口から飲む)ことになります。ホルモン製剤を投与することにより、ほとんどの症状は改善されます。

ただし、変性を起こした甲状腺の機能が回復する見込みはあまりないため、ホルモン製剤の投与は一生続けていかなければなりません。

また、投与する薬の量にも細心の注意が必要です。

製剤が少なければ症状は改善されず、多すぎれば甲状腺機能亢進症を起こし、かえって愛犬の体に危険を及ぼします。処方された薬の管理と投与には、十分気をつけるようにしてください

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まとめ

以上、犬の甲状腺機能低下症についてまとめてみました。

甲状腺機能低下症にはさまざまな症状がありますが、「元気がない」「目に力がない」などの症状は、一緒に暮らす家族にしか気づくことが出来ません。

早期発見、早期治療は健康寿命をのばすための必須条件。

上記の症状のうち、あてはまる項目が3、4個以上ある場合はもちろん、とくに現状ではあてはまる症状がなくても定期的な健康診断で血液検査を行うときには、

ついでに甲状腺の機能も

調べてほしいのですが……

と伝えてみるてはいかがでしょうか。

最後までお読みいただき、

ありがとうございました(^^)

■参照
・正常値参照元:株式会社ランス(小動物専門の臨床検査会社)(http://www.lans-inc.co.jp/inspection/data/naibunpitu1.pdf)
・異常値(診断基準)参照元:犬と猫の内分泌疾患ハンドブック(2011.9.11 版)松木直章(東大・獣医臨床病理学研究室)(http://www.vm.a.u-tokyo.ac.jp/vcpb/endo-dx.pdf)

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