今回はジビエ肉の与え方についてまとめてみました。
知識がないまジビエの生肉に触れてしまうと、愛犬だけではなくヒトにも寄生虫感染のリスクが発生します。
知り合いにジビエの生肉をもらったけれど、どうしていいか分からない、という方は、ジビエの生肉に触る前に、ぜひお読みいただければと存じます。
ジビエって何?
ジビエ(gibier)とは、猟師が狩猟によって捕獲した野生鳥獣を指すフランス語で、野生鳥獣にはクマ、イノシシ、シカ、野ウサギ、キジ、カモなどが含まれます。
日本では敬遠されがちですが、フランスでは高級食材のひとつとして扱われています。
ここ数年、ペットフードでもよく利用されているのを見かけるようになりましたね。
ペットフードとして市販されている物はしっかりと衛生管理をされた施設で加工され、かつ、各種検査を経て市場に出ている物だと信じていますので、それを犬に与えることに何の問題もありません。
問題は『猟師さんが獲ったものを、そのまま解体、生肉(冷蔵)の状態で入手したもの』を犬に与える場合です。
ジビエの生肉はなぜダメなの?
ジビエの生肉が危険と考えられている理由は以下のとおりです。
飼育管理されていない=何を食べているかわからない
通常、飼育されている動物は食事の管理をされていますが、野生動物は何を食べているかわかりません。
草食動物のはずのシカですら、病原菌をもったサワガニを食べて「ウエステルマン肺吸虫」に感染していた可能性が示唆されています。

草を食べるときに一緒に入ったのではないかと考えられています。
草食だから安全、とは言い切れないということですね。
他の動物の死体も食べる雑食動物のイノシシでは、何を食べていても不思議ではありません。

寄生虫等の検査を受けていない=何らかの病気にかかっていることに気づかない危険性
スーパーなどで販売されている食肉は、「と畜場法」により管理されており、1頭ごとに専門の獣医師による細菌や寄生虫の検査(いわゆる「と畜検査」)が行われています。
一方、シカやイノシシなどの野生鳥獣を解体、販売する場合、食品衛生法しか守るべき法がありません。(厚生労働省のガイドラインはあります)
食品衛生法では病気又はその疑い、その他の異常で死亡した動物の肉などは使用してはいけないことになっていますが、獣医師による細菌検査などは義務とされていません。
細菌検査や寄生虫検査を経ていないので、その肉のなかに病原微生物や寄生虫がいるのか、いるとしてどのようなモノがいるのか、まったくわからないのです。
食肉 | 獣医師による細菌検査や寄生虫検査が義務付けられている(と畜場法) |
ジビエ | 獣医師による各種検査は義務ではない |
寄生虫は胃酸では死なない
残念ながら、寄生虫は胃酸では死にません。
鮭などに寄生するアニサキスが胃のなかでも長く生存できることは有名ですね。
酸に強い寄生虫や病原微生物は珍しくありません。ジビエに限らず、生ものを食べるときには十分気をつけるようにしてください。
生肉食はヒトも犬も厳禁!
ということで、(衛生管理をされた施設で自主的に細菌検査などを行っている加工肉以外の)ジビエの生肉は細菌検査や寄生虫検査をへていない可能性があります。
もし、猟師さんからジビエ肉を手に入れたとしても、ヒトも犬も、絶対に生(冷蔵)の状態では食べないでください。
また、ジビエの生肉に触れた調理器具は摂氏83度以上の温湯で熱湯洗浄・消毒(または200ppm以上の次亜塩素酸ナトリウム等による消毒)をしてください。※厚生労働省ガイドライン
検疫を受けていない野生動物の肉には、消毒薬にホルマリンを使用しても感染力の落ちないウイルスがいる可能性もあります。
生肉を触る場合、素手では触らず、処分して良いゴム手袋や新聞紙、ビニールシートなどで手や調理場などを保護した方が安全です。

ジビエの肉を食べさせたい場合、どうしたらいい?
厚生労働省のガイドラインにおいて、ジビエ肉を飲食店で提供する場合、
が条件としてあげられています。
「お肉の中央温度が75℃の状態で1分以上加熱」と同等な加熱殺菌の条件※厚生労働省
厚生労働省は、この2つの条件を満たせば、ヒト用に提供しても大丈夫としています。
一方、一般財団法人東京顕微鏡院によると、
ジビエで感染する可能性のある感染症に「E型肝炎ウイルス」があります。一般財団法人東京顕微鏡院によると、E型肝炎ウイルスが感染力を失うためには、70℃で10分間、または95℃で1分間の加熱が必要とのことでした。
まとめ
最近では、さまざまな野生動物の肉を使用したおやつやフードもたくさん販売されています。
これらのものについては、きちんとした工場で加工され、かつ十分に加熱調理されたものであれば、特に問題はありません。
ですが、獣医師による寄生虫検査などを受けていない、猟師がとったジビエ(野生鳥獣)の肉を与えてみようと考えている場合には、感染症または寄生虫のリスクを十分把握したうえで入手し、必ず加熱処理して与えるようにしてください。
愛犬を健康にするために購入したフードで、愛犬が病気にかかっては本末転倒です。
また、調理に使用した包丁などの調理器具についても、生肉の処理終了ごとに摂氏83度以上の温湯で熱湯洗浄・消毒(または200ppm以上の次亜塩素酸ナトリウム等による消毒)をするなど、保護者さん自身が何らかの病気に感染することがないよう、取り扱いには十分に気をつけてくださいね。
特に子犬や子猫、小さいお子さんや高齢者など免疫力が低い方がいらっしゃるご家庭では、ジビエ生肉の取り扱いには十分にご注意ください。

最後までお読みいただき、
ありがとうございました(^^)
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