動物病院によって医療費がちがうのはなぜ?令和5年調査結果から見る医療費の中央値

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ご存知の方も多いと思いますが、動物病院の診療報酬設定は全国一律ではありません。

診療報酬が全国一律の公定価格に設定されていて、(健康保険さえ適用されれば)日本全国どこの医療機関でも同じ価格で医療を受けられる人間の病院とちがって、動物病院は獣医師が自由に診療にかかわる費用を設定できるのが現状です。

(診療点数法による加算があるので、人間の医療費も実際には同じ価格になることは少ないですが……。)

ということで、今回は、なかなか他人に相談しにくい[動物病院の医療費]について調べてみました。

この記事でわかること
  • 動物病院の医療費が統一されていない理由は?
  • 各医療行為に対する医療費の中央値は?(いくらに設定している所が多い?)
  • 動物病院によって、どのくらいの差額があるの?
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なぜ動物病院によって医療費がちがうの?

その理由をひとことで言うと、料金設定を一定にすることを法律(独占禁止法)が禁止しているため

獣医師の診療料金は独占禁止法により、獣医師団体(獣医師会等)が基準料金を決めたり、獣医師同士が協定して料金を設定したりすることが禁じられているのです。

開業医B
開業医B

この辺の動物病院は初診料1,500円なんだけど、

開業したAさんのところも1,500円に設定しない?

新人開業医A
新人開業医A

あ、そうなんですね。

わかりました!そうします!

――ということは、してはいけないよ、

ということですね。

現状、診療費・処置料・手術費・ワクチンの費用はおろか、薬の料金までも各動物病院が自由に設定することができることになっています。

そのため、同じ内容の治療を受けたり、同じワクチンを接種したりした場合でも、病院によって料金がちがうことがある、というわけなんですね。

飼い主側の選択肢が増える

飼い主は動物病院を決める際、

  • 獣医師の人柄で選ぶ
  • 獣医師の腕で選ぶ
  • 動物病院の立地で選ぶ
  • 動物病院の設備で選ぶ
  • 口コミで選ぶ

など、さまざまな理由でかかりつけ医にする動物病院を選ぶことができます。

これにくわえて、❺医療費で選ぶこともできるのです。

❹いくら病院の設備が良くても、医療費が高くて通うことができないのでは意味がありませんからね。

医療費の安さも、動物病院を選ぶときの重要な基準になりえるとわたしは思います。

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公益社団法人日本獣医師会の調査結果で中央値を見る

そうなると気になるのは、自分のペットの

かかりつけ医の診察料金は高いのか、安いのか……

ほかの病院がいくらなのか。

知りたくても近所の動物病院に聞いてまわる、というのはなかなかハードルが高いですね。

これについて[公益社団法人日本獣医師会]が有益な調査結果をホームページに公開してくれています。

以下、一部を抜粋してみましたが、全部のデータを見たいという方は、日本獣医師会のPDFファイル(全122ページ)をご確認ください。

家庭飼育動物(犬・猫)の診療料金実態調査【PDF】

表1)診察料・注射料など

 名目中央値(平成27年)中央値(令和5年)
【診察料】初診料1,386円1,500円
再診料726円750円
往診料2,232円2,500円
時間外診療(平日)2,324円2,500円
時間外診療(休診日)2,646円2,500円
時間外診療(深夜)4,513円6,250円
【文書料】診断書1,983円2,500円
【注射料】皮下注射1,425円1,500円
筋肉注射1,433円1,500円
静脈注射1,812円1,500円
経留置針注射2,117円2,500円
【輸液】静脈内2,999円4,000円
皮下1,952円2,500円
狂犬病予防接種2,944円4,000円
犬混合ワクチン(5種・6種)6,388円6,250円
犬混合ワクチン(8種~10種)8,180円8,750円
猫混合ワクチン(Felv含む)6,514円6,250円
【耳鼻科】外耳処置1,256円1,500円
【歯科・口腔外科】歯石除去8,849円11,250円
抜歯3,491円2,500円
※家庭飼育動物(犬・猫)の診療料金実態調査 一部抜粋

ちなみに、左側の医療費は平成27年の調査時データで、右側のデータが令和5年(最新)のものになります。

表2)検査・手術・治療費など

名目中央値(平成27年)中央値(令和5年)
【不妊治療】猫去勢12,652円12,500円
犬去勢17,675円17,500円
猫避妊(卵巣子宮切除)20,986円22,500円
犬避妊(卵巣子宮切除)27,413円27,500円
【眼】白内障10,000円7,500円
【耳】耳血腫17,874円17,500円
【呼吸器】気管虚脱41,000円45,000円
横隔膜ヘルニア47,259円62,500円
【消化器】胃切除50,000円62,500円
直腸脱32,392円35,000円
【体表】肛門周囲腺腫30,867円27,500円
肛門嚢切除32,201円35,000円
【血液検査】採血料727円750円
生化学検査4,625円6,250円
フィラリア検査(抗原検査)2,113円2,500円
【糞便検査】採取料0円0円
直接法737円750円
【尿検査】採取料(圧迫)0円0円
採取料(カテーテル採尿)1,127円1,500円
【超音波検査】心エコー3,698円4,000円
腹部エコー3,204円4,000円
【健康診断】1日ドッグ14,021円16,250円
※これらの医療費は、麻酔料を含まず、かつ体重10㎏の犬について提示されたもの
表2についての補足

表2の各アンケートは、「麻酔料は含めず、体重 10kg の犬での料金をお知らせください」という条件のもとで動物病院に提示されていました。おそらく、検査や手術などの費用は犬の大きさによって変わるためでしょう。10kg以下の小型犬や10kg以上の中型・大型犬では中央値はちがうと思われますので、その点、ご承知おきください。

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上記の表1、2を見る上での注意点

この日本獣医師会の調査資料をお読みいただければ、すぐにわかることなのですが、本調査結果は全国の1,096名の小動物臨床獣医師から得られた回答を元に集計したものであって、全国すべての動物病院に対して行ったアンケートではありません

【農林水産省の獣医師の届出状況(獣医師数)】によれば、令和5年の獣医師の届け出総数は40,455名。

そのうち、個人診療施設に勤める者は18,881名でした。

つまり、このアンケートは少なく見積もっても全国の個人診療施設に勤める獣医師全体の17%ほど(18,881名のうちの1,096名)からしか聞き取れていない、ということ。

とはいえ、今はこのデータくらいしか診療報酬に関するものがないので、こちらを参考にするしかないのですが、全国のうちの20%以下の意見ですから、このデータをもってして、

中央値は●●円よ!

もうちょっと安くしなさいよ!!

なんてご無体は仰らないようにしてくださいね。

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動物病院ごとの差額について

家庭飼育動物(犬・猫)の診療料金実態調査に載っているのは中央値だけではありません。

それぞれの医療費に対する回答数も掲載されているのですが、これがまた面白い結果になっていますので、下記にふたつ抜き出してみたいと思います。

文書料(診断書)

料金回答件数
1無料112件
2500円未満10件
3500円~1,000円未満115件
41,000円~2,000円未満294件
52,000円~3,000円未満290件
63,000円~5,000円未満231件
75,000円~7,500円未満27件
87,500円~10,000円未満0件
910,000円~12,500円未満0件
1012,500円~15,000円未満0件
1115,000円~17,500円未満0件
1217,500円~20,000円未満0件
1320,000円~25,000円未満0件
1425,000円~30,000円未満0件
1530,000円~40,000円未満0件
1640,000円~50,000円未満0件
1750,000円以上0件
18対応外4件
無回答13件
全体1,096件

不妊手術(犬去勢)

料金 回答件数
15,000円未満2件
25,000円~10,000円未満77件
310,000円~15,000円未満172件
415,000円~20,000円未満286件
520,000円~25,000円未満244件
625,000円~30,000円未満159件
730,000円~40,000円未満78件
840,000円~50,000円未満18件
950,000円~75,000円未満2件
1075,000円~100,000円未満1件
11100,000円~150,000円未満0件
12150,000円~200,000円未満2件
13200,000円~250,000円未満0件
14250,000円~300,000円未満2件
15300,000円以上0件
16対応外26件
無回答27件
全体1,096件

面白いことに診断書を無料で書く病院があれば、5,000円~7,500円かかる病院もあることがわかります。

また、犬の不妊治療では、さらに差額は大きくなって、5,000~10,000円とする回答が77件、一方250,000円~300,000円未満とする回答が2件となっています。その差額は22~23万円。決して安くない金額です。

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まとめ

かかりつけの動物病院(獣医師)を決める場合に、もっとも大切なのはその病院ないし獣医師を信用できるかどうかだと思います。

そして病院の会計が不透明というのは、とても獣医師不信につながりやすいです。

たとえば、上の表のように手術代がほかの病院より高かったとしても、

獣医師
獣医師

どこの病院で受けても開腹手術&1週間の入院が必要だけど、

本病院には日本に1台しかない最新機器があるので、

開腹することなく日帰りで治療ができるんですよ!

という説明が事前にあっていれば、20万円以上高くても納得できますよね。

かかりつけの獣医師を決めるときは、獣医師の技術や経験、人柄はもちろん大事ですが、会計がクリアかどうかも、しっかり見極めるようにしていただきたいと思います。

最後までお読みいただき、

ありがとうございました(^^)

■参照
公益社団法人日本獣医師会(https://jvma-vet.jp/clinic/ryokin_pdf/r5.pdf)
農水省HP(https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/zyui/attach/pdf/index-4.pdf)

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