今回はペットフードのパッケージにある「この商品は、ペットフード公正取引協議会の承認する分析(または給与)試験の結果、○○用の総合栄養食の基準を満たすことが証明されています」の意味について調べてみました。
ドッグフード選びに迷っている方などに、お読みいただければと思います。
ペットフード公正取引協議会とは?
ペットフード公正取引協議会(以下「PF協議会」といいます)とは、1974年に設立された事業者団体で、2020年8月1日現在、正会員66社、準会員2社の計68社が所属しています。
という公正競争規約(ルール)を自主的に設定し、これらを円滑かつ適正に運営することを目的として活動しています。
ペットフード公正取引協議会の会員になるには
PF協議会に入会するための要件はとくに記載されておらず、
ペットフードを製造又は輸入して販売する事業者及びこれらに準ずる事業者等のうち、製品表示の主たる責任を有する事業者、或いはこれらの事業者で構成される団体等
であれば(理事会による審査はあるようですが)、誰でも加入申込できるようです。
ただ、加入は任意で、PF協議会に所属していないとペットフードを製造・販売することはできない、というわけではありません。
PF協議会のホームページによると「本国内で販売されている90%以上は会員でカバーされている」とありますので、国内で販売されているペットフードのうち、10%以下のものがPF協議会の会員ではない会社の取り扱うフード、ということになります。
会員には有名フード会社名がずらり
上記のとおり、正会員66社、準会員2社の計68社が会員として名をつらねており、有名な会社はひととおり所属している印象です。
以下に正会員の一部を抜粋してみます。
すべての会員はPF協議会のホームページ上の会員一覧から見ることが可能です。
これらの会社はPF協議会の会員ですので、当然、PF協議会が自主的にさだめている公正競争規約を遵守したペットフードを取りあつかっている、ということになります。
自分の購入するペットフードがPF協議会に所属する会社のものかどうかを知っておきたいという方は、上記のPF協議会のホームページでご確認いただければと思います。
自主的ルールである『公正競争規約』とは?
PF協議会に属する会社(会員)がわかったところで、次に、PF協議会が自主的に定めた
- ペットフードの表示に関する公正競争規約
- ペットフード業における景品類の提供の制限に関する公正競争規約
という公正競争規約(ルール)について見ていきましょう。
公正競争規約の目的は「不当な顧客の誘因防止」
それぞれの規約の第一条に目的が規定されています。
【ペットフードの表示に関する公正競争規約】
第 1 条(目的)
この公正競争規約(以下「規約」という。)は、不当景品類及び不当表示防止法(昭和37 年法律第 134 号)第 31 条第 1 項の規定に基づき、ペットフードの取引について行う表示に関する事項を定めることにより、不当な顧客の誘引を防止し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択及び事業者間の公正な競争を確保することを目的とする。
【ペットフード業における景品類の提供の制限に関する公正競争規約】
第1条(目的)
この公正競争規約(以下「規約」という。)は、ペットフード業における景品類の提供の制限を実施することにより、不当な顧客の誘引を防止し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択及び事業者間の公正な競争を確保することを目的とする。
ふたつの規約の目的は、表示や景品について制約や制限をさだめることにより、「不当な顧客の誘引を防止し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択及び事業者間の公正な競争を確保すること」です。
簡単にいうと、
などの正しくない表示をして、お客さんをだましたうえで自社の製品を選ばせるというような不正をしてはいけませんよということですね。
私たち一般消費者はペットフードのパッケージに書いてある説明だけで商品を選別しなければなりません。
実際に入っている原材料、添加物が正確に書かれていないと、もはや何をよりどころに商品を選べばいいかわからなくなってしまいます。
ウソの表示でお客さんをだまして、自社製品を選ばせてはいけない
たとえば、まったく同じ(オーガニックでない)素材を使用して作られたペットフードなのに、A社の商品のパッケージには「オーガニック」と表示があり、B社の商品には何も書かれていなかったとします。
その場合、価格が同じくらいであれば「オーガニック」の表示を選ぶヒトが多くなることが予想されますよね。
『ペットフード』と『オーガニックペットフード』
このふたつが同じ価格なら、後者を選ぶ人が多いはず。
だからこそ、ウソの表記はかたく禁じられています。
公正競争規約は、このような不正な表示(根拠のない表示や誇大表示)をPF協議会の会員同士が自主的に禁止し、お互いにしないようにと制限しあうためのものです。
たしかに「消費者に正しい情報を伝える」という側面も持ちますが、この規約の目的はあくまで「事業者間の公正な競争を確保すること」。
ペットフードをあつかう競合会社のみんなで、
入っている原材料や添加物などを正確に記載して、
公正にお客さんにアピールしましょうね!
というのが、文言上さだめられた目的なのです。
PF協議会の公正競争規約の目的:
ペットフードの栄養学上の安心や安全性を保障するというより、ペットフードを取り扱う競合会社同士が公正に競争することをさだめたもの
「ペットフード公正取引協議会の承認する分析試験の結果、総合栄養食であることが証明されています」のもつ意味とは?
総合栄養食とは、そのペットフードと水だけで健康状態を維持できる、栄養成分をバランスよく配合したフードのことをいいます。
現在、PF協議会の会員会社がペットフードを総合栄養食として販売するためには、PF協議会の分析試験あるいは給与試験を行い、そこで求められた基準をクリアする必要があります。
コストや準備の面から、日本においては給与試験が行われることはほぼなく、ほとんどの会社で分析試験が用いられているようです。
分析試験では、AAFCO(米国飼料検査官協会)のデータが採用されており、このAAFCOで定められた基準(犬で37項目、猫で42項目)を満たせば、総合栄養食の基準に適合しているとみなされます。
すなわち「この商品は、ペットフード公正取引協議会の承認する分析試験の結果、総合栄養食の基準を満たすことが証明されています」は、「この商品はAAFCOの基準を満たしています」と言っているにすぎないのです。
AAFCOの基準を満たしている=問題なし?
では、AAFCOの基準を満たしていれば問題なしといえるのか。
結論からいうと、私はAAFCOの基準を満たしているだけでは、栄養学上の問題がないと言いきることはできないと考えています。
なぜなら、たとえば【タンパク質】のAAFCOの基準(最小値)は成長期・繁殖期の犬で22.0%、維持期の成犬で18.0%と設定※されていますが、最大値は設定されていません。
つまり、含有量が25.0%でも30.0%でも「AAFCOの基準を満たして」おり、すなわち、評価は一律に「基準をクリアしている」になるわけです。
確認すべきは証明の有無ではなく、原材料と成分一覧
AAFCOの基準の中には、最小値だけが定められているものも多くあります。
しかし、それらの成分の中には最大値の数値設定ができないというだけで、上限がないわけではないものもあります。
「総合栄養食の基準を満たすことが証明されています」の表示は、あくまで「AAFCOの基準に設定された数値は満たしていますよ」の意味であって、栄養バランス上の問題がないことを保障するものではないのです。
現状、ある成分の含有量がAAFCOの基準より5%超えていても、10%超えていても、AAFCOの基準さえ満たしていれば『総合栄養食』と表示してもウソではないし、問題はないんですよね。
いやらしい言い方になりますが、
あとはそれぞれの会社の善意を信じるしかありません。
なお、カビ毒や有毒性の添加物などに関する上限値は、ペットフード安全法で規制されています。
というわけで、ペットフードを選ぶときは、「総合栄養食の基準を満たすことが証明されています」という表示だけを見て安心するのではなく、かならず、原材料および(栄養)成分表を確認してから選ぶようにしていただければと思います。
まとめ
ペットの栄養に関しては、まだまだ未解明の部分も多くあります。
ただ、ひとことに犬といっても『チワワ』から『セントバーナード』までが含まれますから、すべての犬に適応する完璧な栄養量を導き出すことは難しいことは理解できます。
このAAFCOの基準にしても完璧な栄養成分として発表されているわけではなく、1997年版が発表されたのち2016年に改良版が発表されたように、今後、この数値ががらっと変更されることも十分に考えられます。
AAFCOの基準をクリアしただけでは、まったく問題ないとは言いきれないのが現状なのです。
「この商品は、ペットフード公正取引協議会の承認する分析試験の結果、総合栄養食の基準を満たすことが証明されています」という表示は「AAFCOの基準を満たしています」というラベルでしかありません。
ペットフードを購入する場合には、公正取引協議会の証明の有無だけではなく、原材料と(栄養)成分表を確認して選ぶようにしていただければと思います。
最後までお読みいただき、
ありがとうございました(^^)
コメント