今回まとめたのは「ペットに与えると中毒を起こしかねない危険な食べ物など」について。
ペットは赤ん坊と一緒です。それが体にいいか悪いかなんて判断できません。
信頼する人間から与えられたもので、しかもそれが美味しければ疑うことなく完食します。そういう生き物なんです。
以下、該当するものをまとめていきます。
それらが今、テーブルの上に載っていないか注意しながらお読みいただければ幸いです。
肉類
タマネギ・ネギなどを使用した肉料理
トップバッターは「タマネギ」「ネギ」などの「ネギ属」を使用した肉料理全般。いわずと知れた代表的禁忌フードです。
すき焼き、ハンバーグ、肉団子、コロッケ、肉じゃが等々。ネギ属野菜は肉との相性がいいので多くの料理に使われています。
人間にとっては健康にいいといわれている「ネギ属」ですが、犬猫がこれらのものを食べた場合、強い溶血作用から貧血、嘔吐、血尿などの症状を経て、最悪の場合死に至ることもある、とても危険な食べ物となります。
ですが、保護者さんさえ気をつけていれば、日常生活において中毒症状を起こすほどの量が体内に入ることはまず考えられません。
タマネギの入ったドレッシングをかけた野菜、オニオンフライに使用した油、長ネギ、ニラなどを切った包丁、使用したまな板、ニンニク料理を食べたあとの食器、食べ残しなどなど。考えてみればいろいろあるものです。
これらすべては洗浄するか、または犬や猫の手の届かない場所で保管するようにしましょう。
生の豚肉・鹿肉(ジビエ)
※ジビエ……狩猟で得た天然の野生鳥獣の食肉
生の豚肉、鹿肉にはトキソプラズマなどの病原性寄生虫や細菌が感染している可能性があります。
加熱すれば死滅しますので、与えるときは必ず加熱した肉を使用するようにしてください。
トキソプラズマはヒトにも感染します。
健康な方ではあまり神経質になる必要はなさそうですが、妊婦さんのいるご家庭では胎児への影響もありますので、十分にご注意ください。
牛や豚に比べてにおいが強めですので、犬の嗅覚を刺激します。ジビエの生肉はにおいが漏れないように工夫し、冷凍庫など犬や猫が手出しできない場所にしまっておくようにしてください。
動物の骨
肉の味がしみこんだ骨は犬の大好物ですが、加熱した鳥の骨では割れたときに針状(とげ)になるともいわれています。食べると消化器官や食道に刺さる可能性があるとのことですので、食べさせないほうが無難です。
犬や猫がひっくり返すことができるゴミ箱に捨てると、ゴミをあさって食べる可能性があります。フライドチキンの骨などを捨てるときは、必ず手(足)の届かない場所へ捨てるか、フタつきのごみ箱に捨てるようにしてください。
また牛や豚の骨については、硬い骨をかじり続けることで歯が摩耗したり折れたりするケースが多々報告されています。
硬い骨が歯に良くないので、圧力鍋で煮込んで軟らかくなった牛や豚の骨なら大丈夫です。
与える際は、のどに詰まらせないよう目の届く場所で与えるようにしてください。
人用に加工された肉製品
ソーセージやウインナー、ハムやベーコンなどの肉加工品は、みなさんご存知のとおり犬の嗜好性がとても高い食べ物です。
ちょっと食べちゃった、くらいであれば大きな問題はありませんが、塩分も高いので、たくさん食べてしまうと塩分過多で腎臓に負担をかけてしまいます。
犬や猫が勝手に食べてしまわないよう、管理にはお気をつけください。
卵
生の卵白
生の卵白に含まれる「アビジン」という成分が、毛や皮ふの重要な成分である「ビオチン」の吸収を妨げ、結果、毛艶が悪くなる、皮ふの炎症を起こすなどの症状を引き起こします。
大量に食べなければ影響はないと考えられていますが、卵は常温保管をしているご家庭も多いかと思います。
留守中、犬や猫がイタズラして卵パックを割って中身を舐めていた、などということがないようご注意ください。

乳製品
牛乳
牛の母乳である牛乳と犬猫の母乳は、以下のとおり成分がまったく異なります。
犬や猫の母乳は、牛乳に比べて含まれる乳糖の割合がとても低いことがわかります。
乳糖を分解するにはラクターゼと呼ばれる分解酵素が必要です。
このラクターゼ、犬や猫では、ヒトや牛に比べてその体内保有数が極めて少なく、そのため牛乳を飲むとすべての乳糖を分解することができずお腹をこわしやすい、といわれています。
ですが、これは一般論。
実のところ、乳糖耐性は個体差が大きく、牛乳を飲んでも平気な子もいます。
とはいえ、飲み過ぎはやはり下痢などの原因になかねません。牛乳が大好きな子は、あればあるだけ飲んでしまいますので、与える量は必ず保護者が調整するようにしましょう。

ペット用に調整されたミルクもあります。与える際は、
ヒト用牛乳ではなく、ペット用ミルクをおすすめします。
ヨーグルト・チーズなどの乳製品
ヨーグルトやチーズは乳糖が分解・除去されていますので、少量なら誤って食べてしまっても問題はありません。
ですが、牛乳と同じで食べ過ぎると下痢などを起こす危険があります。
また、チーズはものによっては塩分が非常に高くなります。
与える場合は必ずペット用に作られた乳製品を与えるようにしてください。
また与える量も保護者が調整し、犬や猫が勝手に食べることのないよう注意しましょう。
コーヒーフレッシュ
コーヒーに入れる「ミルク」といいますが、実は中身は「ミルク」ではなく、ただの「油」。
与えても百害あって一利なしですので、与えないようにしてください。
魚・魚介類
(※猫)白身系の生魚
食べすぎると白身系の生魚に含まれている分解酵素のチアミナーゼがチアミン(ビタミンB1)を破壊し、ビタミンB1欠乏症になります。
ビタミンB1が欠乏すると神経症状(脳の障害)、意識障害などを起こす原因にもなりえます。
大量に摂取しなければ問題はないようですが、『缶詰のフードを主食として食べていた子でビタミンB1欠乏症が疑われ、治療したところ改善した』という報告も確認しました。
缶詰のフードしか食べないという子の場合、同じ缶詰を毎日食べさせるのではなく、ちがう味のものを食べさせた方がいいのかもしれません。
なお、チアミナーゼは加熱すれば効力を失います。魚は猫の必須アミノ酸であるタウリンを多く含むという利点もありますので、加熱した白身魚を適量与える分には問題ありません。
(※猫)生のマグロ・青身の魚
マグロの赤身やイワシやサバなどの青身の魚は不飽和脂肪酸が多く、またビタミンEが少ないため、これだけをたくさん食べ続けると不飽和脂肪酸の摂りすぎとビタミンE不足により、体内の脂肪が酸化して黄色脂肪症(イエローファット)状態を引き起こす危険があります。
こちらも大量に、または毎日摂取しなければほとんど問題はありませんが、とくにマグロは嗜好性が高く、好きな子は驚くほどの量をぺろっと食べてしまいます。
慢性的な摂取過剰にならないよう、与える量は必ず保護者で調整してください。
鯛などの硬い骨
鯛の中骨、イサキの背びれなど硬く鋭いものは、食道や消化器官などに刺さる恐れがあります。
与える場合は、必ず骨を取りのぞき、また処分するときも犬や猫の手の届かない場所に捨てるようにしてください。
また、海や河川敷などに散歩に行くと、たまに吊り上げられた魚が打ち捨てられていることがあります。
川沿いの散歩が多い方は拾い食いにも十分ご注意ください。

河川敷には魚の死骸の他、釣り針、ごみも多いです。
怪我などしないようにお気をつけください。
生のエビ・カニ/イカ・タコなどの魚介類
白身系の生魚と同じく大量に食べるとビタミンB1欠乏症を引き起こす可能性があります。
上記のとおり、加熱すればチアミナーゼは効力を失いますので、加熱したものを少量であれば問題はないようです。
ただし、エビ・カニとちがって、イカ・タコは消化があまりよくありません。
与える場合は胃腸に負担がかからないよう細かく刻み、食べ過ぎないようにもご注意ください。
貝類(内臓)・ツブ貝
ツブ貝は唾液腺に「テトラミン」という神経を麻痺させる中毒物質を持つため、絶対に食べさせてはいけません。
また、アワビの内臓(中腸腺)にも皮ふ炎の原因となる物質が含まれており、皮ふの腫れ、炎症、脱毛、ひどいケースでは部分的に壊死も起こります。
壊死:身体の細胞や組織が一部死んでいる状態
その他、あさりやホタテ、牡蠣(かき)などの二枚貝はエサであるプランクトンが原因で毒をもつことがあります。
内臓(ヒモとウロ)を処理すればいいともいわれていますが、処理も手間ですし、そうまでして与えないといけないものでもありませんので、与えない方が無難かと思います。
人用に加工された魚介加工品
かまぼこやちくわ、すり身や干物などの魚介加工品も肉加工品と同じく塩分が高めです。
「少しだけ、かじっちゃった」くらいであれば問題はありませんが、塩分過多で腎臓に負担をかけないためにも犬や猫が勝手に食べないよう、管理にはお気をつけください。
煮干しやちりめんじゃこ、かつお節なども基本的には(減塩のものを除き)塩分およびマグネシウムの含有量が高めです。
腎臓があまりよくない子は、とくに避けたほうがいい食材です。
ビニール袋を勝手に引き破って食べていた、などということがないよう十分ご注意ください。

野菜・果物・豆類
タマネギ・ネギなどを使用した料理全般
「肉類」のところで書いたとおり、タマネギなどネギ属には強い溶血作用があります。
中毒を起こす量も個体差が大きく、ほんの一口食べただけで貧血や血尿などの症状を発症する子もいます。
中毒耐性が高い子もいますが、わが子の耐性がどのくらいかわからない以上、ほんの少しでも食べないように注意するに越したことはありません。
生のタマネギ、ネギ、ニンニクなどを犬や猫が好んでかじることは考えにくいですが、子犬や子猫の場合、転がっていくそれらをおもちゃと勘違いして遊びながらかじってしまうかもしれません。
ネギ属の野菜を使用した肉・魚料理の管理には十分ご注意ください。
生のホウレンソウ
生の状態だと「シュウ酸」を多く含むため尿路結石ができやすい、といわれています。
尿路結石ができるほどの量を生で犬や猫が食べるとは考えにくいですが、シュウ酸の推定致死量はヒトの場合で「15~30g」というデータもあります。猫草などの葉ものを好んで食べる子では特にご注意ください。
シュウ酸は水溶性物質ですので、茹でるだけでほとんど流れ出てしまいます。
茹でたものを適量与える分には問題ありませんが、もちろん茹で汁は与えてはいけません。
じゃがいもの芽・緑に変色したじゃがいも
じゃがいも自体は特に問題ありませんが、じゃがいもの芽および緑色に変色したじゃがいもには天然毒素の「ソラニン」や「チャコニン」が多く含まれています。
えぐみもあるので勝手に食べることはないと思いますが、転がして遊んでいるうちに誤って口に入ることがないようお気をつけください。
また、シュウ酸と異なり、加熱しても分解しないため含有量は変わりません。
「調理したから大丈夫」ということはありませんので、ご注意ください。
アボカド
アボカドに含まれる「ペルジン」という成分が下痢や嘔吐を含む胃腸の炎症などを引き起こします。
とくにグアテマラ系に多く含まれ、最悪の場合では、死に至るケースもあるようです。
果実部分だけでなく皮も種も危険です。
山菜類の佃煮、煮つけ
ワラビ・ゼンマイには「チアミナーゼ」が、また、タケノコには「シュウ酸」が含まれます。
チアミナーゼのとりすぎは生のエビ・カニのところで、シュウ酸のとりすぎはホウレンソウのところでそれぞれ解説したとおりです(タケノコのシュウ酸も加熱すれば減少します)。
そのままのものを犬猫がかじることはほとんどないと思いますが、かつお節やいりこを使って佃煮にしたり煮つけにした風味豊かなものであれば、勝手に食べてしまうことはあり得ます。
味付けしたものは塩分も多めですので、しっかり管理しておきましょう。
ぶどう・干しぶどう(レーズン)
2001年、アメリカの研究グループから「干しぶどう(レーズン)を食べた犬(10例)が急性腎不全を発症した」という報告があがりました。
その後、英国からも4例の報告事例があったほか、2005年、先と同じアメリカの研究グループから43例の発症事例が発表され、ぶどう、特に干しぶどう(レーズン)摂取の危険性が広く知れ渡ることになりました。
残念ながら、現時点では原因物質については同定(特定)されていないようですが、ぶどうが腎不全を引き起こす原因となり得ることはデータとして事実です。
絶対に犬や猫が食べてしまわないよう、管理には十分お気をつけください。
バラ科植物の種子・果物
ビワ、アンズ、ウメ、モモなどのバラ科植物の種子、または果実(未成熟)には、天然の有害物質である「シアン化合物」が多く含まれています。
犬や猫が転がして遊ぶのにちょうどいい大きさですので、保管にはお気をつけください。
誤って飲み込むとのどや器官につまって呼吸困難を起こすおそれもあります。
マカダミアナッツ
ぶどうと同じく原因は同定(特定)されていませんが、中毒症状が報告されています。
食べた後12時間以内に嘔吐、痙攣、後肢の麻痺、発熱、運動失調などの症状が発現します。
これまで報告にあがっているのは犬のみですが、猫も必ずしも発症しないとはいえませんので与えない方が無難です。
マカダミアナッツそのものも危険ですが、もっとも注意が必要なのがハワイのお土産の定番「マカダミアナッツチョコレート」
マカダミアナッツ中毒とチョコレート中毒のダブルの危険がありますので、絶対に手の届く場所に放置しないようご注意ください。

お菓子・飲み物
チョコレート・ココアなど(カカオ含有)
原料であるカカオに含まれる「テオブロミン」が心臓や中枢神経を刺激し、嘔吐、発熱、痙攣、不整脈、ふるえなどの症状を引き起こすといわれています。
個体差があるため、症状の現れない子もいるようですが、場合によっては死に至る危険性もあります。
チョコレートに犬や猫が取るべき栄養はありません。
絶対に与えず、また、犬や猫が勝手に食べないようにもご注意ください。
キシリトール
犬がキシリトールを少量でも摂取するとインスリン分泌促進作用が過剰反応し、急激な低血糖を引き起こすという報告があがっています。
低血糖症の他にふるえ、肝臓障害(急性肝不全)、嘔吐などの症状がみられることもあります。
有名なのはキシリトールガムですが、キシリトールは「甘味料」ですので、ガム以外にもチョコレートやグミ、タブレットなど他の製品に使用されていたり、また、プラムやいちご、カリフラワーなどにも含まれています。
犬では摂取後30分以内に吸収されるといわれており、食べたことに気づいたらすぐに吐かせるのが最善の方法ですが、間に合わず飲み込んでしまった場合には、血糖値が急激に下がらないよう糖分(ブドウ糖)を食べさせつつ、すぐに動物病院へ連絡し、どうしたらいいか確認するようにしてください。
「ブドウ糖」は市販されていますが、常備しているご家庭は少ないと思います。「ブドウ糖」がない場合には、応急処置的に「砂糖を少量なめさせる」でもOKです。とにかく血糖値が急激に下がらないようにしてください。
カバンや洋服のポケットに入れっぱなしのものを勝手に食べる可能性もありますので、十分気をつけるようにしてください。
ミルクティー・コーヒー牛乳・紅茶葉入りのシフォンケーキなど(カフェイン含有)
紅茶、日本茶、コーヒーなどに含まれる「カフェイン」の過剰摂取で、不整脈、心拍の上昇、痙攣などの神経系の異常を起こす危険性があります。
無糖のコーヒーや紅茶を好む犬や猫は少ないと思いますが、牛乳を入れたものや紅茶葉の入ったシフォンケーキなどの加工品になると一気に嗜好性が増します。
とくに紅茶葉入りのケーキ類は、お茶のティーバッグを食べた犬で死亡例もあることから、与えないとともに、犬や猫が勝手に食べないようにも注意が必要です。
アルコール・アルコールを含むお菓子など
こちらも甘口のカクテルなどだと舐めてしまう子がいないとも言えません。
また、お菓子の中には洋酒や日本酒など、アルコールを使用したものがたくさんあります。
ヒトとちがって、犬や猫はアルコール分解酵素をもっていません。
ほんの一口でも命取りになりかねませんので、絶対に犬猫に勝手に飲まれることのないよう厳重に管理してください。
酔っぱらって前後不覚で寝てしまう、という方が宅飲みする際は、飲酒部屋に犬や猫が入れないようにしておくようにしましょう。
まとめ
以上、「犬猫に与えてはいけない危険な食べ物など」についてまとめてみました。
今回は一覧としてまとめたかったので、
といった部分はあえて省略しています。
その点については、今後、テーマごとに取りまとめたものを順次追加していく予定です。
機会がありましたら、そちらもご参照頂ければ幸いです。

最後までお読みいただき、
ありがとうございました(^^)
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