愛犬が5歳になったら考えておきたい老犬介護|要介護度1~5段階で必要になる時間と労力

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今回のテーマは、愛犬が5歳になったら考えておいてほしい『老犬介護』について。

犬が要介護状態になるとどんなことが起こるのか、どのような備えをしていればいいのか、自分の生活がどのくらい変わってしまうのか、愛犬家のみなさんに知っておいてほしいことをまとめました。

この記事はこんな方におすすめ
  • はじめて犬を飼うので、シニア期のことが想像できない
  • ちょうどシニア期に入ったところ。心構えとして知っておきたい
  • 愛犬が若いうちから出来る備えがあれば教えてほしい
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老犬介護について考えておくことの大切さ

私は愛犬を17歳で亡くしたのですが、亡くなる前の半年間は完全寝たきりの24時間介護状態でした。

犬を飼うのははじめてのことで、まさかそのような状態になるなど、それまで一度も考えたことがありませんでした。

排泄は外でするという習慣があったため、寝たきりになっても外でしか排泄せず、17㎏の身体を抱きあげて2、3時間に一度庭に連れ出し、腰をかがめて愛犬の身体を支えながら排泄を待つ、という生活が4カ月ほど続きました。

育児であれば、そのしんどさからの解放は『対象者のひとり立ち』という喜びを意味しますが、介護の場合の解放が意味するのは『被介護者の死』。

病に苦しむ愛犬を24時間介護するのも辛いけれど、介護が終わるのも地獄という、救いのない時間が連綿と続きます。

愛犬が元気なうちから介護について考えておく。これは「介護のことはそのときになって考えればいい」どころか、愛犬に介護が必要になることなど考えもしなかった私の自戒を含めての提案です。

すべての犬に介護が必要になるというわけではありません。最期まで自分でご飯を食べ、トイレに行き、眠るように亡くなったという子もたくさん看てきました。

ただ、『備えあれば憂いなし』です。

介護が必要にならないよう、普段の健康状態に気をつけつつも、万が一の場合に備えておくことは愛犬家の心構えとして大切なことではないかと思います。

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シニア期と犬の平均寿命

バーニーズマウンテンやセントバーナードなどの超大型犬は6歳がシニア期突入の目安。シニア期とは、それまで出来ていたことができなくなったり、動きがゆっくりになったり、散歩で歩ける時間が短くなったりと、いろいろと身体の変化が起こってくる時期です。

犬はその身体の大きさによって、シニア期に差し掛かると考えられる年齢が異なります。

  • 小型犬・超小型犬:11歳以上~
  • 中型・大型犬:8歳以上~
  • 超大型犬:6歳以上~

一方、犬の平均寿命は以下のとおり。

 超 小 型 犬小 型 犬中・大型犬
2010年14.37歳14.13歳13.69歳
2017年15.01歳14.66歳13.29歳
2023年15.07歳14.29歳13.86歳
一般社団法人ペットフード協会 令和5年 全国犬猫飼育実態調査

一般的に小型犬より大型犬のほうが短命になる傾向があります。

  • 大型犬のほうが老化のスピードが速いため、
  • IGF-1遺伝子が関係している、
  • がんを発症する確率が上がるため、
  • 小型犬と比べると臓器の比率が小さい(臓器に負荷がかかる)ため

などがその理由としてあげられていますが、科学的にはいずれも確定していません。

  • 超小型犬であれば11歳~15.07歳(一生の約27%
  • 小型犬であれば8歳~14.29歳(一生の約42%
  • 中・大型犬であれば6歳~13.86歳(一生の約58%

この期間をシニア犬として暮らしていくことになります。

なかには平均寿命を超えて長生きしてくれる子もいますから、その場合は、それぞれの%の数字はもっと増えてくることになります。

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老犬介護士による要介護度表

以下の表は、犬の要介護度について老犬介護士でもある阿良々木が独断でまとめたものになります。

人間の要介護度を参照にしつつ、24時間つきっきりの介護が必要になる要介護度5の状態を100%として介護のために束縛される時間や労力などをわかりやすく数値化してみました。

本表を作るにあたっては、自分の愛犬だけではなく、シッティングでお世話をさせていただいた、たくさんの老犬さんたちの状態も参考にしています。

要介護度❶-❺表

 要介護度❶ 要介護度❷ 要介護度❸ 要介護度❹ 要介護度❺
介護度  10%  25%  50%  70%  100%
起き上がり/
立ち上がり
■やや不安定。
■時間はかかるが自力で立ち上がることができる。
■自力で起き上がれるときと起き上がれないときとがある。
■少しの支えがあれば起き上がることができる。
■自力で起き上がれるときより、起き上がれないときのほうが多くなる。■介助なしには起き上がることができないが、起き上がれば自力で体勢を維持することができる。■介助なしには起き上がることができず、起き上がっても自力では体勢を維持できない。
散歩/
歩行
■足がふらついたり、つまずいたり、または後足を引きずって歩くようになる。■自力では困難
■ハーネス等の補助があれば歩くことができる。
■ハーネスで吊り上げるようにしないと歩けない。
■犬の体重によっては車いすなどを検討する。
■車いすなどに載せれば、載せている間は自力で歩行することが可能。■車いすなどに乗せても自力で動くことはできず、抱っこやカートによる散歩のみ。
食事/
日常生活
■おおむね一頭で過ごせている。■食事や散歩の際など、部分的な介護が必要。■食事や散歩の際など、部分的な介護が頻繁に必要。■介護なしに生活することは困難。■介護なしに生活することは不可能。
排泄■ほぼ自力でできる■部分的に介助が必要■ほぼ全面的に介助が必要だが、排泄自体は自力でできる。■介護なしでの排泄は困難■介護なしでの排泄は不可能
夜鳴き※■ときどき小さな声で鳴くことがある。■要求の有無にかかわらず、小さな声で頻繁に鳴く。■要求があるとき、大きめの声で鳴く。■要求があるとき、それが達成されるまで大きな声で鳴く。■要求の有無にかかわらず、大な声で頻繁に鳴く。
徘徊※■ふらふらと自力で歩き、ベッドではないところで力尽きて眠っていることがある。■まれに狭い所に入り込み抜けなくなるなど、人手がかかるようになる。
(旋回運動)
■ケガをしかねない危険な徘徊がみられる。
■頻繁に人手がかかるようになる。
■前庭疾患や認知症などの病気により、同じ場所をぐるぐる回り続ける。
■ 寝かせたら寝る。
■前庭疾患や認知症などの病気により、同じ場所をぐるぐる回り続ける。
■寝かせても手足をばたつかせるため、床ずれが生じやすくなる。
※夜鳴き・徘徊に関しては、まったくない子もいる

要介護度❶:時間的・労働力的・金銭的負担【5%】

階段を登るのをためらうようになったり、散歩の途中で帰ろうとしたり、これまで出来ていたことが出来なくなったと感じることが増えてきます。

動物病院を受診した際、主訴を伝えると関節の薬やサプリメントなどを勧められることがよくあり、それらを使用することにした場合には、金銭的な負担が増えていきます。

まだ時間的、労働力的な拘束はそれほど感じません。

要介護度❷:時間的・労働力的・金銭的負担【25%】

立ち上がろうとして失敗したり、散歩時に足がもたついたり、よろけたりするようになります。

多少、身体を支えてあげたり、食事の際に食器をもっていてあげたりする必要が出てきます。

犬の大きさと自身の体力にもよりますが、超小型犬であっても時間的・労働力的な負担は多少なりとも確実に感じるようになります。

要介護度❸:時間的・労働力的・金銭的負担【50%】

愛犬が自分の力だけで行動をすることが難しくなりだす状態です。

段差がないところでもよろめいたり、変な起き上がり方をしようとしてこけたりしてケガをする危険性があるため、食事や排泄のときだけではなく普段の生活でも気を張る時間が増えてきます。

獣医師から散歩を禁じられていなければ、気分転換のため散歩には連れ出してあげたいところですが、自力では歩くことが難しくなるため、補助具を使って持ち上げるか、犬の体重によっては車いすなどの器具を用いる必要が出てきます。

金銭的負担としては、病院代の増加に加え、これらの補助具などを購入する費用などもかかりはじめます。

散歩に連れ出すことのメリットとしては、①日光浴をすることで体内時計が整う、②ストレスが緩和される、③外的な刺激によって気持ちよく疲れさせることができるなどがあり、これらはすべて夜間の睡眠をうながす効果が期待できます。

要介護度❹:時間的・労働力的・金銭的負担【70%】

人間の介護なしに生活することは困難という状態です。

何らかの支えがあれば立っていることは出来るけれど、方向を変えたり、座ったりすることは難しいため、食事、排泄など、何らかの行動を起こす場合には、人間の補助を必要とします。

自分の要求を認識できている様子で、自分の欲求が満たされれば静かになることが多いですが、その要求が何なのかを見つけることはかなり難しく、人間の側にあらゆることを試してみる根気が試されます。

❶ご飯を食べさせてみる、❷トイレに連れて行ってみる、❸身体の向きを変える、

❹冷暖房を調整する、❺抱っこしてみる、❻身体の各所をマッサージしてみる、

などなど。鳴きやむ(要求が満たされる)まで色々付き合ったものです。

これは私の偏見ですが、正解を見つけるまでの時間には、子犬の頃からの信頼関係それまでに培ってきた飼い主としての知識の差が如実に表れます。

愛犬が若いうちから「いま、愛犬は何を伝えたがっているだろうか」「お腹が空いたときは、どんな表情をしているのか」「トイレに行く前には、どんな行動をしているか」など、愛犬が送る小さなサインに気をつける癖をつけておくのは良いことだと思います。

これは、介護にかぎらず、普段の小さな異変(病気の早期発見)にも気づきやすくなりますのでおすすめです。

私は老犬介護のプロですが、『うちの子のプロ』である

飼い主さんの知識には到底かないません。

トイレに連れていけば自力で排泄をし、食器を口元に持っていけば自力で食事はできるくらいの力は残っている状態ですが、寝ている時間以外は神経を使うことが増え、なかなか気が休まらない時間が続きます。

要介護度❺:時間的・労働力的・金銭的負担【100%】

寝たきりで自力では起き上がることさえ出来ず、起こしても支えなしでは体勢を維持することも不可能な状態です。

食事や排泄も自力では難しいため、強制的に行わないといけません。

※なお、排泄の強制は危険が伴いますので、獣医師に直接指導された場合を除き、素人が勝手に行ってはいけません。

起き上がることは出来ないものの、寝た状態で身体を動かすことは出来てしまうためそれが原因で床ずれを起こしかねず注意が必要です。

また、床ずれ対策としては2、3時間おきに身体の向きを変えたり、床ずれができにくいベッドを購入したりすることも大切で、時間的、金銭的負担が要求されます。

そのような状態なので、寝ている時間でさえも気が抜けず、24時間介護状態が続きます。愛犬を大事にしている飼い主さんほど、精神的にも肉体的にも極限まで追い詰められ、身も心もボロボロになってしまいます。

このような状態になったとき、頼れる人を見つけておくことは大切です。

  • 家族で交代しながら看ることができるか相談しておく
  • 週に1日でも預かってもらえるペットホテルや動物病院を見つけておく
  • 信頼できるペットシッターなどの第三者と知り合いになっておく、などなど。

また、金銭的な負担も確実に増えますので、ペット保険に加入しておくいざというときのための資金を貯めておくなど、金銭的な対策も検討しておくと安心材料になります。

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まとめ

もちろん犬により個体差がありますので、すべての犬さんにおいて上記の表のとおりの介護が必要になるというわけではありません

本表は、あくまでも目安程度にご参照いただければと存じます。

最初に申し上げたように、介護期間がまったくなく、亡くなる前日まで体調の異変に気づかなかったというケースもそれほど珍しい話ではないようです。

知人の愛犬(大型犬)は前日の昼まで普通にご飯を食べ、散歩をし、普段通りの生活していたものの、その日の夕方に急に体調を崩し、翌深夜に息を引き取りました。
介護期間という緩やかなお別れの時間を1日も得られず、突然愛犬を失った彼女は、7年経った今でもまだ立ち直れていません。

介護は辛くしんどいです。

大切な愛犬が病に苦しむ姿を見続けなければならず、そうかといって安楽死を選んであげることもできない。

きれいごとの通用しない世界で、ゆっくり眠ることもできず、精神的にも肉体的にも極限まで追い詰められます。

言葉が話せない犬や猫の異変は、いつだって突然起こります。

しかし、万が一、愛犬に介護が必要になった場合でも、知識があれば避けられる問題は多いはずです。

信頼できる第三者を見つけておく、車いすや酸素室などの器具について調べておく、いざというときのためにペット貯金をしておくなどなど、飼い主が共倒れにならないよう、愛犬が元気なうちからしっかり地固めをしておくことを強くおすすめします。

とはいえ、今回は老犬介護についてまとめましたが、皆さんに何より目標にしてほしいのは『シニア期~平均寿命までの期間の健康寿命を延ばすこと』。

普段から愛犬の様子にしっかり目を配り、病気の早期発見、早期治療につなげていくことで介護犬生をうまく回避し、皆さまの愛犬が『介護不要の元気なシニア犬生』をお過ごしになられることを心より願っております。

最後までお読みいただき、

ありがとうございました(^^)

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