今回は、知人の獣医師が「とっても大切!」といって推奨する【尿検査】についてまとめてみました。
「最近、愛犬のおしっこの量が多い気がする」「多頭飼育でひとりひとりのおしっこ量を管理できていない」「針を刺す血液検査には抵抗があるけれど、臓器の状態は調べてもらいたい」など、愛犬の尿に関するお悩みがある方の参考になれば幸いです。
興味があればお付き合いください。
どうして尿検査が推奨されるの?
一般的な血液検査では、腎臓の機能が残り4分の1になったときに初めて数値に異常が出てきます。
その時点で気づいて、それ以上の腎臓機能の悪化をふせぐためにアレコレしても、もはや守るべき腎臓の機能は4分の1しか残っていません。
これに対して、尿検査では腎臓の機能が残り2分の1以下になった時点で数値に異常が出てきます。
ということは、そこで異常に気づければ、腎臓の機能の2分の1が残った状態で腎臓の保護に努められるわけです。
腎機能が2分の1残っているのか、はたまた4分の1しか残っていないのか。
再生機能のない腎臓にとって、この差はとても大きいです。
費用も尿検査の方が安いですし、自然排尿なら身体に針も刺しませんから、愛犬の身体にも優しい検査です。
潜血(OB)の数値からわかること
「OB」とは「occult blood」の略で、意味はそのまま「潜血」です。
文字どおり、尿中に血が潜(ひそ)んでいないかどうかを判断する項目です。
一般的に、尿潜血の状態では、見た目にはそれほど変化がありませんので、肉眼で見て、その異常(OBの数値が基準値より高いこと)に気づくということは非常にむずかしいと思われます。
ちなみに、見た目でわかるほど尿が真っ赤な色をしている状態は「潜血」ではなく「血尿」です。
異常があった場合、疑われる可能性のある病気や状態など
尿比重(SG)の数値からわかること
SGとは、「specific gravity」の略で、これもそのまま「比重」という意味です。
尿比重とは、尿に含まれる水分と、水分以外の物質(老廃物)の割合を算出したものです。
数値が高い場合、体内に水分が少ないことを意味しており、脱水などにより尿が凝縮されている可能性があります。
反対に、数値が低い場合は、体内の水分が多いことを意味しており、体内の老廃物が尿として排出されていない可能性を示しています。
老廃物が尿として排出されていない場合、腎臓の機能が低下していることが疑われます。
異常があった場合、疑われる可能性のある病気や状態など
【数値が高い(水分が少ない)】
【数値が低い(水分が多い)】
グルコース(GLU)の数値からわかること
グルコースとは糖の名称で、別名「ブドウ糖」ともいいます。
よく糖尿病との関係で問題になりますが、腎臓の機能が正常であればグルコースが尿中から検出されることはないため、腎臓機能の異常を知ることもできます。
が。ここでひとつ注意しておかなければならないのは、「腎臓ではなく尿管のほうに問題があってグルコースの再吸収が上手くできないときにも尿糖が検出されてしまうことがある」ということです。
ですので、尿糖がある場合には、あわせて血液検査をすることで血糖値を測定し、どこに問題があるのかを見極めることが重要になってきます。
高血糖(糖尿病腎症)状態をそのまま放ったらかしにすれば、「糖をろ過して体の外へ出す」という仕事をまかされている腎臓にたくさんの負担がかかります。
糖の量(仕事量)が多くなれば、
働く腎臓が疲れるのは当然ですね
これでは、腎臓は疲れてしまい、腎症は腎不全へと進行していきます。いわゆるブラック企業状態です。可哀想な腎臓はフラフラです。
残念ながら、現在の医療では一度こわれた腎臓機能を再生させることはできません。
残っている腎機能をまもるためにも、高血糖状態が判明した時点で適切な糖コントロールを行い、腎臓を保護してあげるようにしてください。
検出された場合、疑われる可能性のある病気や状態など
【血糖値は正常値である場合(尿だけに糖が溶け出している)】
【血糖値も異常値の場合(尿にも血液にも糖が溶け出している)】
pHの数値からわかること
pHとは水素イオン指数を指し、尿が酸性なのかアルカリ性なのかを知ることができます。
一般的に正常値は5.5~7.5と考えられており、これより数値が高ければアルカリ性尿、低ければ酸性尿となります。
いずれの場合でも結石ができやすいため注意が必要です。
また、食べ物からの影響も大きく、植物性タンパク質をたくさん食べている子ではアルカリ性尿になりやすく、動物性タンパク質をたくさん食べている子では酸性尿になりやすい傾向があります。
気になる方は普段食べさせているフードの内容も獣医師に伝え、総合判断をしてもらうようにするといいかと思います。
それぞれの場合、疑われる可能性のある病気や状態など
【数値が高い(アルカリ性尿)場合】
【数値が低い(酸性尿)場合】
ケトン体(KET)の数値からわかること
通常、体の中でエネルギーを作り出す際には糖が分解されますが、糖尿病になると糖がエネルギーとして分解されなくなります。
とはいえ、エネルギーがないと体を動かせませんので、糖のかわりに脂肪酸がエネルギーとして分解されるようになってしまいます。
脂肪酸が分解されると、アセチルCoA(活性酢酸)という物質が発生するのですが、このアセチルCoAから作られるのが「ケトン体」で肝臓で生成されます。
これが尿の中に排泄されることで数値が陽性に傾きます。
異常があった場合、疑われる可能性のある病気や状態など
亜硝酸塩(NIT)の数値からわかること
尿の中には「硝酸塩」という成分が含まれているのですが、膀胱内に大腸菌などの一部の細菌が入り込むと、これが化学変化を起こし「亜硝酸塩」という物質に変化します。
ということで、亜硝酸塩の数値に異常がある場合、細菌感染が疑われます。
この「亜硝酸塩」に関して注意すべきポイントは以下の3つになります。
- すべての細菌に化学反応を起こすわけではないので、一部の細菌を見落とす可能性があること
- 膀胱滞在時間が短いと亜硝酸塩を作る時間が足りず、細菌がいても陰性を示すことがあること
- 尿を採取して時間が経過したものは、他の原因で細菌が混入している可能性があること
異常があった場合、疑われる可能性のある病気や状態など
ビリルビン(Bill)の数値からわかること
ビリルビンとは、赤血球などが壊れたときに生成されるもので、別名「胆汁色素」とも呼ばれる黄色い色素のことをいいます。
健康なときには血液中にはほとんど含まれませんが、何からの異常があったときに血液中に漏れ出し、こうして血液中にたまったビリルビンが尿として排出されます。
陽性反応があった場合には、血液検査と同じで肝機能や胆嚢(たんのう)の障害が疑われることになります。
異常があった場合、疑われる可能性のある病気や状態など
ウロビリノーゲンの数値からわかること
ウロビリノーゲンとは、ビリルビンが腸内細菌によって分解されたときに発生する物質で、「±」〜「1+」が正常値とされています。
人間の尿検査ではしっかり調べられる項目ですが、現在のところ、犬や猫の検査においては、臨床的意義はあまりないと考えられているようです。
尿タンパク(PRO)の数値からわかること
グルコースと同じく、腎臓の機能が正常であればタンパクも尿中から検出されることはありません。
ですので、尿タンパクが検出された場合には、腎臓機能が低下している可能性があります。
通常、「陰性」もしくは「1+」までは正常値と考えられていますが、先に述べた比重(SG)との比較も重要で、比重が低い(水分が多い)にもかかわらず「1+」の場合には、数少ない老廃物の中を、たくさんのタンパク質が占めているということですので、異常なタンパク尿である可能性もあります。
また、未去勢の男の子では精子が混入してしまい、タンパクの数値が上昇することもあります。
検出された場合、疑われる可能性のある病気や状態など
尿タンパク/クレアチニン比(P/C比)の数値からわかること
尿タンパクの説明は上記のとおりです。
クレアチニンとは、筋肉が運動するための重要なエネルギー源である「クレアチンリン酸」の老廃物のことを指していいます。
尿P/C 比とは、尿中クレアチニン1g あたりに含まれるタンパク量をいいます。
腎機能が低下すると、①尿中に含まれる老廃物(クレアチニンなど)の量が減り、かつ②まだ使えるタンパク質を再吸収できずに尿として排出されてしまいます。
そのため、腎機能が低下すると尿中のクレアチニン濃度が減るとともにタンパク質濃度が増加し、結果、尿P/C比が高くなるというわけです。
通常、これまでに説明したように、尿の状態は食べた物などに影響を受けることが多々ありますが、このP/C比はそういった要因による影響が少ないため、信頼性のあるデータが測定できます。
また、血液検査で尿素窒素(BUN)やクレアチニン(CRE)の数値が高かったものの、尿検査で本項目(尿P/C比)が正常値であれば腎臓自体には問題がないことがわかりますので(この状態を「腎外性腎不全」といいます。)、血液検査でBUNなどの数値が高かった場合には、尿検査もすることをお勧めします。
異常があった場合、疑われる可能性のある病気や状態など
まとめ
以上のとおり、尿検査は腎臓機能の状態を知るうえで、とても優れた検査です。
便検査と同じく、自然排尿であれば犬さんの身体に負荷をかけることなくできますし、費用も血液検査に比べると安い価格でしてくれる病院が多いです。
かかりつけの獣医師と相談の上、ぜひ活用して健康管理にお役立てくださいね。
最後までお読みいただき、
ありがとうございました(^^)
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