犬がキシリトールガムを誤食したときの低血糖をふせぐ応急処置の方法

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さて、今回はキシリトールについてまとめていきたいと思います。犬に与えてはいけないものにはいろいろありますが、じつはキシリトールもそのひとつ

興味があれば、お付き合いください。

 今、愛犬が【キシリトールガム】を食べちゃったという方へ
  • 危険な量の目安は犬の体重5㎏でガム1粒、10㎏で2粒、15㎏で3粒
  • 低血糖をおこす心配があるので、食物繊維+糖分をとらせるといい
  • ただし術前・術後・持病があるなど心配な場合は、先に獣医師へ連絡を
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キシリトールって何?

白樺(しらかば)や樫(かし)など、カバノキ属の樹液を原料とする天然の甘味料で、糖アルコールの一種です。

藁(わら)やとうもろこしのカラや芯などにふくまれる【キシロース(木糖)】を加工(還元)することでも精製されます。

甘味の強さはショ糖の65%ほどあり、くわえてカロリーは砂糖より25%も低いため、ダイエット用食品糖尿病患者のための砂糖代用品として広く利用されており、日本では1997年に食品添加物として登録(認可)されました。

また、虫歯を予防する作用もあるため、デンタルケア用品にも数多く利用されています。

「糖アルコール」ということはお酒なの?

糖質には、①糖類(砂糖・でんぷん由来の糖)、②その他の糖類、③糖アルコールがあり、キシリトールは③の「糖アルコール」に分類されます。

①糖類砂糖…甘藷(さとうきび)糖、甜菜(てんさい)糖
でんぷん由来の糖…ブドウ糖(グルコース)、果糖、麦芽糖など
②その他の糖類オリゴ糖、乳糖など
③糖アルコール糖質に水素を添加する、または微生物による発酵で作られる。キシリトール、ソルビトール、エリスリトール、還元水飴など

なお、アルコールといいますが、この場合のアルコールは「炭化水素の水素原子を水酸基で置き換えた化合物」の意味であって、エチルアルコールとは別物であり、キシリトールに酒の成分などは一切ふくまれていません。

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キシリトールが含まれる食品・生活用品

野菜・果物

プラム、いちご、ラズベリー、バナナなどの果物や、カリフラワー、なす、レタス、ほうれん草、ニンジンなどの野菜に含まれます。

菓子類

チューイングガム、タブレット、グミ、チョコレート、プリン、ゼリー、缶詰のフルーツ、キャンディ、クッキー、ジャム、ジュース、ケーキなど。

ノンシュガー、シュガーレスなどの表記のあるもの、あるいは清涼感をうたっているものに多く含まれます。

生活用品

歯みがき粉・口腔洗浄液などデンタルケア用品、ウェットティッシュ、トローチ、ハンドクリーム、消臭剤などにも使われています。

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なぜ犬にキシリトールを与えてはいけないの?

ヒトの場合

キシリトールは、ほかの糖質に比べてて糖の吸収がゆっくり行われます。

急激な血糖値の上昇がなく、かつ代謝するのにインスリンを必要としないため、糖尿病患者が砂糖のかわりとして使える調味料として重宝されています。

犬の場合

一方、犬の体内では、キシリトールの働きはまったくちがいます。

犬がキシリトールを摂取すると、体内でブドウ糖(グルコース)を摂取したときのおよそ6倍のインスリンが放出されます。

インスリンは、血液中の糖を細胞に取り込む、つまり血液の中を流れている糖を捕まえては細胞に取り込み、体を動かすエネルギーにするのがお仕事です。

インスリンが6倍放出される、ということは、ブドウ糖を摂取したときのおよそ6倍の糖が血液の中から取り出されてしまうということ。その結果、血液中の糖が不足し、低血糖を起こしてしまうというわけです。

これが、犬にキシリトールを与えてはいけないといわれる理由になります。

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誤って食べた場合、どんな症状が現れる?

低血糖の影響により、おう吐、元気の消失、ふらつき、衰弱、発作などの症状がみられます。

肝臓障害をおこしたという報告もありますが、低血糖が進行した犬のすべてで肝臓の障害が起こるわけはありません。

低血糖状態がおこるのはインスリンの過剰分泌が原因と判明していますが、肝臓障害がおこる原因については

  • 低血糖状態によって引きおこされる
  • 肝細胞に障害を与える活性酸素が産出され、これが原因で肝臓が壊死したためにおこる
  • キシリトールを代謝するためにATP(アデノシン三リン酸)が消費されるためにおこる(※下記参照)

などの原因が考えられていますが、現在のところあきらかになっていません

Q.ATP(アデノシン三リン酸)が消費されることが、どうして肝臓障害の原因なの?

A.ATP(アデノシン三リン酸)とは、生物が生きていくために必要なエネルギー源です。キシリトールを代謝するために体内のエネルギーが消費され、そのほかの臓器にまわすエネルギーが不足し、その結果、肝臓で障害がおこるのではないか、という考え方です。上記のとおり、これが肝障害の原因というわけではなく、あくまで可能性のひとつです。

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キシリトールを摂取した後、症状が現れるまでの時間は?

摂取のあと、20分ほどでインスリン濃度が急激に上昇し、40分ほどで最高値をしめす場合もあれば、24時間~30時間ほどたってから症状が現れるケースもあります。

これらのデータから、摂取後は30分~2日(48時間)くらいは注意して様子をみる必要があると考えられています。

なお、ミントとキシリトール(含有量100%のもの)を一緒に摂取すると、ミントがキシリトールの分解と放出を促進させ、30分以内に体内に吸収されてしまいます。

ミント製品と一緒にキシリトールを摂取した場合、もっと早く症状が現れるケースが多いため、より早急な対応が求められます。

ミントを含むキシリトールガムなど【ミント製品+キシリトール】には、とくにご注意ください。

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どのくらいの量を食べると危険なの?

市販のガムの1粒におよそ0.5g~1.5g(500mg~1,500mg)のキシリトールが含まれています。

犬がキシリトールを摂取した場合、100mg/kg以上の摂取で中毒症状を起こし、500mg/kgの摂取で肝不全に関係してくる可能性があると考えられています。

これを具体的な数値に当てはめると、以下の表のとおりです。

犬の体重中毒症状を起こす量キシリトールガムだと
5kg500mg1粒
10kg1,000mg2粒
15kg1,500mg3粒
(※1粒…0.5mgとして計算)

とはいえ、この量を食べるとかならず中毒症状を起こすというわけではなく、

  • ガムなどを噛んだ回数(キシリトール成分が体内に入った量)
  • 直近に食事を取っていたかどうか(体内に糖分がどのくらい残っていたか)
  • どのような状態のものを飲み込んだのか(紙に包まれた状態のガムを飲み込んだのか、溶けやすいタブレットなのか、あるいは、ほかの形状のものか)

などの状況のちがいにより、症状が現れない場合もあります。

また、食事ととも食べた子では症状が出なかった、という報告もあり、体内の糖分が少ないほど中毒症状が起こりやすいと考えられています。

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誤飲時の対処法について

まだ口の中にある場合は、早急に取り出す

口の中でまだくちゃくちゃしているのであれば、大至急、取り出してください。

その際はタオルで口を広げるなどして、手を噛まれないように十分注意してください。

すでに飲み込んでしまった場合は、糖分と食物繊維をふくむものを食べさせる

すでに飲み込んでしまった場合、キシリトールによるインスリンの過剰分泌により低血糖をおこさないよう、糖分のあるものを少量ずつ何度か与えてください。

上記のとおり、体内の糖分が少ないと中毒症状をおこしやすくなります。

また、食物繊維にはキシリトールの排出をうながす効果がありますので、できれば糖分があり、かつ食物繊維も含むものがいいでしょう。

糖分があり、食物繊維も含むもの
  • 普段食べているフード(ドライフード・ウエットフード・缶詰など)
  • さつまいも(干し芋・焼き芋)
  • かぼちゃ(水煮・レンジで加熱したもの)
  • りんご(一口サイズにカット・すりおろし)
  • 納豆ご飯(タレなし)

あわててのどに詰まらせないように、与えるときは、大きさなどに十分気をつけてください。

ただし、その子の状態(術前・術後や持病の関係)によっては、過剰糖分をとってはいけない場合もあります。

誤食してしまったことに気づいたら、かかりつけの動物病院へ連絡し、糖分をとってもいいか確認したうえで、獣医師の指示にしたがってください。

素人判断で吐かせてはいけない

吐かせる行為は危険をともないます。素人判断では決して行わないようにしてください。

「動物病院に連絡をしたら吐かせるように指示を受けた」という場合には、かならず獣医師の指示にしたがった方法で吐かせるようにしてください。

なお、早ければ摂取後30分ほどで、すでに体内に吸収されている可能性があります。

体内に吸収されたあとで吐かせても、愛犬の体に負担がかかるだけで、まったく意味がありません

動物病院に連絡する場合には、かならず「どのくらい前に、どのくらいの量を摂取(誤飲)したか」を伝えるようにしてください。

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まとめ

肝臓障害の原因はまだ特定されていないこと、データ量が少ないことを理由として、「犬にキシリトールは有害とは言いきれない」という考え方もあるようです。

私自身、データに根拠をもとめるほうですので、「たしかにデータは少ない」という気がしないでもありません。

とはいえ、2006年にアメリカでキシリトールの中毒性に関する報告があったことは事実ですし、データは少ないとしても、中毒症状を起こした犬がいたことも事実です。

なにより、キシリトールは犬にとって必須アミノ酸のような、犬の身体にとって絶対的に必要な栄養素というわけではありません。体に必要でないものをあえて与えて、危険をおかす必要はありません。

キシリトールをふくむ食べ物などは愛犬に与えないよう、また愛犬がまちがって食べることのないようご注意いただければ幸いです。

最後までお読みいただき、

ありがとうございました(^^)

■参照
・禁忌食(その3)-犬のキシリトール中毒:中島誠之助他著,ペット栄養学会誌,16巻(2013)1号,P.30-32
・犬における実験的Lactic Acidosis発症に及ぼすキシリトールの効果について:浅野喬著,糖尿病,18巻(1975),2号

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